GPLでコミュニティに公開

サン、64スレッドCPU「T2」をオープンソース化

2007/12/12

 サン・マイクロシステムズは12月11日、以前は「Niagara 2」のコードネームで呼ばれていた新プロセッサ「UltraSPARC T2」の仕様をオープンソースコミュニティに公開した。同社の主力チップを軸とした開発コミュニティの拡大を目指す取り組みの一環だという。

 サンが8コアのUltraSPARC T2チップをリリースした2007年8月、同社の幹部は、「OpenSPARC」プログラムを介して同チップの仕様をオープンソースコミュニティに提供するつもりだと話していた。

 サンでFronted TechnologiesおよびOpenSPARC Programの上級ディレクターを務めるシュレニク・メータ氏は、Niagara 2をGPL(General Public License)に従ってオープンソースコミュニティに開放する目的について、同チップを支える大規模なコミュニティを形成し、対応するオペレーティングシステムやアプリケーションの数を増やすためだと説明している。同社は2005年に「UltraSPARC T1」プロセッサの仕様をリリースしており、以来、同ソースコードのダウンロード回数は6500に達しているという。

 「2005年にUltraSPARCの仕様を公開した時は、新たなマーケットを作りだし、エコシステムを成長させることが目的だった。比較的手間をかけずにそのようなことを実現したいと考えていたわれわれが、最も容易でなおかつ効率的な方法として選んだのがコードのオープン化である。多くの利点を持つ技術なのだから、人々と共有し、裾野を広げていくべきだと考えた」(メータ氏)

 最初のNiagaraの仕様公開を受けて、複数の企業がこれを利用し、新製品を開発した。例えばSimply RISCというイタリア企業は、T1のデザインを用いて、モバイルデバイス向けの無線インターフェイスを搭載したシングルコアプロセッサを作ったという。

 2006年にサンの最高経営責任者(CEO)となったジョナサン・シュワルツ氏は、就任後から一貫して、多数の製品をオープンソースコミュニティに提供していく機運を高めてきた。UltraSPARCプロセッサのほかにも、サンは独自OSの「Solaris」を「OpenSolaris」プログラムの下で公開している。

 加えて、5つの大学が「OpenSPARC Centers of Excellence」という新プログラムの中核を担うことになったと、サンは発表した。同グループは、同チップの技術に基づいた研究開発コースを大学で開講するという。このプログラムに参加しているのは、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、テキサス大学オースティン校、ミシガン大学、イリノイ大学アーバナシャンペーン校、カーネギーメロン大学の5校。

 イリノイ大学でコンピュータ科学を専攻しているジョセフ・トレラス教授は、同大のOpenSPARCプログラムのコーディネーターだ。同氏は、Niagara 2の数百万行に及ぶソースコードのダウンロードを、さっそく開始しようと意気込んでいる。

 トレラス氏が特に関心を抱いているのは、UltraSPARC T2のようなマルチコアプロセッサの設計や性能を含む、並列コンピューティングに関する分野だという。トレラス氏は同僚とともに、チップレベルでシステムの安全性を上げる方法や、気温などの外部要因がパフォーマンスに与える影響といった、複数の研究対象に取り組んでいる。

 このほか、各コアの命令スレッド同士の連係についても解析する予定だそうだ。UltraSPARC T2は、各コアのスレッド数が8で、合計64スレッドのプロセッサとなっている。

 「同プロセッサのこのような特徴のおかげで、普段では使用できない研究ツールが使えるようになる。マルチコアプロセッサのデザインとしては最先端をいくUltraSPARC T2の内部を観察し、研究に役立たせることができるのは、われわれにとって実に有益である。サンのコンピュータアーキテクチャ専門家が直接関わってくれるため、同チップのデザインを深いところまで分析できる。このプログラムが始まる前には知ることもなかったような事実を発見できるだろう」と、トレラス氏はeWEEKに語った。

 11日にUltraSPARC T2仕様がリリースされた際、メータ氏は、ロジックゲート回路やテストスイートなどの設計をはじめ、ソースコードの大半を公開すると明言していた。ただし、米国家安全保障局(NSA)が同チップの暗号処理高速化技術として認可したアルゴリズムは、公開不可能だという。

原文へのリンク

(eWEEK Scott Ferguson)

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