2008年に巻き返し

クアッドコアOpteronの失敗からAMDが学んだ教訓

2007/12/21

 米AMDのクアッドコアOpteron(コードネームBarcelona)立ち上げに至る数カ月の間、経営陣はずっと、インテルのクアッドコア製品との違いはその設計にあると繰り返していた。

 2007年初め、AMDは1つのシリコン上に4つのプロセッサコアを置いたクアッドコアプロセッサ製造により、デュアルコアOpteronの成功を引き継ぐかに見えた。インテルのクアッドコア製品はデュアルコアのXeonプロセッサ2個をつなぎ合わせたものであり、AMDの設計はこのアプローチに対する直接的な攻撃だった。

 しかし現在、Barcelonaはクロックスピードのパフォーマンス不振、出荷前の増産問題、ハードウェアの障害を引き起こしかねないバグなど大量の問題に見舞われており、その一部は、AMDのクアッドコア設計に対するアプローチに起因しているようだ。2008年に向けAMDは、経験から学んでクアッドコアプロセッサを再び軌道に乗せることは可能だと主張する。

 AMDは2008年第1四半期中に、製造準備が整ったクアッドコアOpteronをパートナー向けに出荷する計画で、OEMからは第2四半期までにアップデート版のシステムが登場する見通しだ。

 AMDのOpteron製造責任者、スティーブ・デムスキ氏はインタビューに応え「(AMDのOEM各社は)少し慎重になっており、その点は当社もまったく同じだ。OEMは当社の言う『修正』バージョンを待っており、現時点で当社はすでに、この特定の問題がない製品の製造に入る段階になっている」と話した。

 「第1四半期にサンプル出荷を開始し、同四半期中に製造に入る。パートナー各社はその後約1カ月かけて対応し、第2四半期には製品が登場すると見込んでいる」とデムスキ氏。

 生産量が伸ばせないのは、1つのシリコン上に4つのコアを配置したBarcelonaの設計や、その複雑さに伴う問題が原因ではないとデムスキ氏は言う。

 「当社は望んだ通りの量を生産しておらず、それが原因で生産量が予想を下回った。当社が望んだようなペースで増産態勢を強化できずにいるうちに、立ち上げから数週間経った後で今回の問題を発見した」

 この経験から、OEMにさらなるテストとデバッグを行ってもらうため、今後のプロセッサはもっと早くOEMに供給すべきだという教訓を学んだという。

 AMD経営陣は、同社が軌道に乗ったということを顧客に納得させたい意向だが、同社が業界の信頼を取り戻すためには新年もイノベーションを続ける必要があるばかりか、2008年を通じてほぼ完ぺきな対応を示す必要があるとして、懐疑的な見方を示すアナリストもいる。

 「これは非常に複雑なプロセッサであり、インテルの現在のクアッドコアよりもはるかに複雑だ。わたしはAMDの言うことを信じるし、同社は Barcelonaをもっと早く出したいと思っていたはずだ」。こう話すのは、米調査会社Technology Business Researchのアナリスト、ジョン・スプーナー氏。「今回の場合、AMDは野心的になり過ぎたようだ。それが一因となって、AMDはインテルと競争する上で大きなリスクを背負う羽目になった」

 AMDの市場シェアは過去数年に比べて拡大している。米調査会社IDCの2007年第3四半期の統計によると、世界市場におけるAMDのシェアは約23%となっている。このため同社の失敗は以前よりも目立つようになり、パートナー各社やIT業界に向け、より現実的な製品のロードマップとスケジュールを示す必要に迫られている。

 「大胆さと慎重さのバランスをとる必要がある」とスプーナー氏。

 Barcelonaの問題は、AMDが12月初旬に設計上のバグを発見したことでさらに悪化した。このバグ自体はTLB(Translation Lookaside Buffer)の一部にあり、2次キャッシュから3次キャッシュに伝送されるデータに問題が生じる(3次キャッシュはBarcelonaで新たに盛り込まれた)。これが原因でOSが誤作動を起こし、ハードウェアがダウンしてしまう。AMDはBIOSをフィックスし、新プロセッサを製造する時にはこの問題を解消すると約束した。

 AMDは約束通り、2008年にクロックスピードを少なくとも2.5GHzに引き上げるとデムスキ氏は話す。さらに45ナノメートル版Opteron「Shanghai」の計画も進め、2008年第1四半期に製造を開始して、2008年後半には製品を登場させる計画だ。

 Insight64のアナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は、過去8カ月の実績だけで、特に2001年から2006年にかけてのOpteronの成功と比べてAMDについて判断するのは公平ではないとしながらも、AMDはもっと現実的なロードマップを提示し、テクノロジーに対するコミットメントを後押しする必要があると指摘した。

 最も難しいのはAMDの革新性と、業界に対するより保守的なアプローチとのバランスを取ることになりそうだ。

 「AMDは過去5年間で多大な信頼を積み重ねてきた。その多くが過去8カ月で台無しになってしまったのは悲しいことだ。その埋め合わせをする1つの方法は、現実的な約束をすることであり、AMDはその約束を守る必要がある」とブルックウッド氏は述べている。

原文へのリンク

(eWEEK Scott Ferguson)

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