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福沢諭吉の稀覯本174冊がグーグルで閲覧可能に
2008/01/10
幕末から明治にかけて進歩的言論を展開し、日本の近代化に多大な影響を与えた福沢諭吉。諭吉は、例えばその著作『尚商立国論』において、武道や軍事を大切なものと考える「尚武」という概念に対して、「尚商」との造語を考案した。江戸時代から続く商業蔑視の風潮が根強い時代にあって、経済活動の重要性を説いた。官に依存した考え改め、民による実業を盛んにして立国する必要があるとした。100年以上前に諭吉が喝破した官尊民卑という宿痾(しゅくあ)は、現代日本に今もまだ残る。福沢翁に耳を傾ける現代的価値は小さくない。
不偏不党の卓抜したこの言論人、福沢諭吉の著作が一部デジタル化された。慶應義塾大学創立150周年の2008年、福沢生誕173年目となる1月10日に慶応義塾図書館は福沢諭吉の著作と『慶應義塾百年史』など174冊をGoogleブック検索を通じて一般公開した。
Googleブック検索は、世界中の本をデジタル化して公開するプロジェクト。慶應義塾大学は昨年7月にグーグルと共同で、所蔵する約240万冊の書籍のうち、著作権保護期間が切れた書籍約12万冊をデジタル化してGoogleブック検索で提供していくと発表。人文社会学系の書籍を中心に、明治・大正・昭和前期の書籍を順次、グーグルが開発した読み取り機とOCRを使って画像とテキストデータにしてインデックス化していく。
今回、第1弾として公開されたのは『学問のすゝめ』『西洋事情』など174冊。世界中、どこからでも閲覧が可能だ。通常、こうした古い書物などの稀覯本(きこうぼん)は閲覧申請を行い、閲覧目的が妥当であるかなどの審査を経て初めて見ることができる。デジタル化でそうした障壁が一気に下がるばかりでなく、海外の研究者に対しても扉を開く。
見開き2ページを最大4000万画素でデジタル化
Googleブックス検索での公開に合わせて、慶應義塾図書館は「福澤諭吉デジタルギャラリー」のテキスト検索機能を2日間限定で実験公開している。福沢諭吉デジタルギャラリーは2007年6月29日からインターネット上で公開しているもので、福沢諭吉著作の初版本55タイトル、全119冊を約2000万画素の高解像で閲覧できる。各著作には書誌情報のほか、解説も付けられている。各画像はFlashによる読書アプリケーションで、実際にページを繰るようなインターフェイスで閲覧できる。
このギャラリーにおいて、既存のデジタルテキストと、読み込んだ画像データとの間のページ対応を手作業で取ることで、全文検索を検索を可能にした。現在、福沢諭吉の代表作『学問のすゝめ』『西洋事情』『福翁自伝』(第1巻)『窮理図解』でテキスト検索を行うことができる。
同大学メディアセンターでは、従来より古書のデジタル化を進めており、専用の撮影機材で見開きを約4000万画素、RAWデータでの保存を試みている。メディアセンター本部の入江伸氏によれば、DVDメディア1枚当たりに十数ページ分しか保存できないほど膨大なデータ量という。こうした膨大なデータは、メディアの経年劣化などのため、むしろ紙の書物よりも保存が困難だという。グーグルが持つ巨大な分散ストレージが、こうした書籍の恒久的保存にも役立つ時代になるのかもしれない。
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