1つのインタプリタ上で複数VMを稼働
マルチVMでRubyを並列化、サンと東大が共同研究
2008/01/10
サン・マイクロシステムズは1月10日、東京大学と産学連携モデルの確立を目指した共同研究に着手したと発表した。両者間の共同研究に関する協定書は2005年6月に東京大学と米サン・マイクロシステムズの間で取り交わされていたもので、今回初めて2つの研究テーマを決定した形だ。
テーマは「RubyとJRubyでのマルチVirtual Machine(MVM)環境の実現」と「Fortress上でのスケルトン並列プログラミング手法に基づいたライブラリ開発」の2つ。
Ruby/JRubyのMVM研究は、東京大学 大学院情報理工学系研究科 竹内郁雄教授のグループと、米サンのティム・ブレイ氏(Director of Web Technologies)、およびJRubyのメンバーとの間で進める。MVM環境の実現によりRubyプログラムがさらに効率的に実行できることが期待できるという。この成果はオープンソースとして公開を予定している。
MVMの技術的課題を明らかにし、実用技術を確立
従来、Rubyで複数アプリケーションを実行すると複数のインタプリタを起動してしまい、メモリ消費量などに問題があった。新たに共同開発するMVMでは、1つのインタプリタ上に複数のVMインスタンスを生成することで効率的な実行を実現する。
具体的に共同研究では、MVMを利用するための共通インターフェイスの策定やVMインスタンス間での並列化やメモリ共有などの技術的課題を明らかにしたうえで、実際にRubyおよびJRubyで利用できる技術の実現を目指す。
共同研究開発の期間は2009年9月末まで。サンは当初1年間分の予算として10万ドルを拠出する。サンのJRubyチームと竹内教授のグループを研究開発の中心として、さまざまな研究者及びプログラマの関与を促す。
Fortress上でのスケルトン並列プログラミング手法に基づいたライブラリ開発
もう1つの研究テーマは、サンが開発したHPC向け言語「Fortress」上で、スケルトン並列プログラミング手法に基づいたライブラリを開発を行うもの。東京大学 大学院情報理工学系研究科 武市正人教授・胡振江准教授のグループと、米サンの研究開発機関であるSun Labsのガイ・スティール博士のグループとの間で共同研究を行う。
Fortressは、「C言語に対してJavaTMテクノロジがもたらしたものと同様のことをFortranにもたらす」べく研究開発が行われている新しいプログラミング言語。
スケルトン並列プログラミング手法は、汎用の並列計算機構を抽象化してスケルトンと呼ばれるプログラムの部品として定義することで、複雑な通信といった並列性を意識させずにスケーラブルなプログラミングを可能にしようとするプログラミング手法。
今回の研究により、並列処理環境におけるプログラミングの利便性を大きく向上させることが期待でき、その成果はOSI認証ライセンスの下で公開する予定という。
共同研究開発の期間は2009年3月末まで。サンは当初1年間分の予算として10万ドルを拠出する。
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