「iモードを解約してもいい」
日本通信がMVNOでiモードの垂直統合モデルに風穴
2008/01/23
日本通信は1月23日、アップルが提供するインターネットサービス「.Mac」のメールを、NTTドコモの携帯電話で利用できるサービス「ConnectMail」を2月1日から開始すると発表した。利用料は年額4800円。利用にはFOMA端末のほか.Macのアカウントが必要。
メールボタンを押すとメールアプリケーションが起動し、iモードとまったく同じ操作性で.Macのメールアドレスを利用できる。受信メールは、iモードメールやほかのケータイのメールと同様に、基本的にプッシュで配信される。端末側の変更が不要で、既存のiモードメールのソフトウェア環境がそのまま使えるため「Webメールをケータイで使うのとはまったく違う使い勝手」(日本通信)で、PCとケータイとで同一メールアドレスを利用できる。
iモードを解約してもいい
実際に日本通信のサービスを端末で利用するには、端末設定で接続先を「iモード」から「日本通信」に切り替える。「慣れれば切り替えは簡単」(マーケティング統括部長 依田信久氏)だが、いったん切り替えるとメールを含めてiモード関連のサービスは使えなくなる。使い勝手や移行の面で不安が残るが、日本通信は「われわれのサービス1本でいいということであれば、月額200円のiモードサービスをご解約いただいても構わない」(依田氏)と強気だ。
接続先にiモードではなく日本通信を指定した状態では、iメニューのボタンを押すと、検索ポータルのモバイルgooが開く。「必ずしもiメニューである必要はない。モバイルgooは充実した使い勝手のいいサービスだと聞いている」(同)
発表日現在、NTTドコモの相互接続に関する約款の問題で、iモード以外ではパケット定額制が適用されない。「こうした差別的扱いはおかしいということで、NTTドコモからは改訂するとの確約をもらっている。2月1日のサービスイン時にはパケット定額制が適用されるように間に合わせたい」(日本通信 常務取締役CFO 福田尚久)という。
世界初のMVNO、今後は他キャリアやISPとも
日本通信は、自社で通信インフラを持たず、他社の通信網を借りて上位レイヤのサービスを行う「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)としてサービスを提供する。
新たに開発した「J-Plat」と呼ぶシステムをNTTドコモのパケット交換機と相互接続。J-Platはiモードセンターのシステムが果たしている機能と同等のものを提供する。具体的には、コンテンツプロバイダのサービスとパケット交換機を結ぶプラットフォームとして機能し、これによりiモードをバイパスするサービスの作成・提供が可能になる。
これまでNTTドコモの回線網を使ったコンテンツサービスは、主にNTTドコモが提供するiモードサービスでのみ利用できた。コンテンツプロバイダが独自にサービスを提供するケースもあったが、制限が多く、使い勝手の面で難があった。例えば、グーグルが提供するFOMA端末向けの地図検索アプリケーションでは、端末のハードウェアから直接GPS情報を得られないため、苦肉の策として、いったんiモードメニューからGPSアプリケーションを呼び出し、そこで得られた位置情報を再び地図アプリケーションに渡すという“回避策”を取っている。NTTドコモが首を縦に振らない限り、GPS情報を扱うアプリケーションの提供はできないのが現状だ。
メールアドレスについても同様だ。端末搭載のメールアプリケーションからは、NTTドコモが付与するdocomoドメインのメールアドレスしか使えない。「多くの人は、それが当然だからで何となく使っているのが現状だ。しかし、われわれはユーザーのニーズは違うと考えている。法人でも個人でも、PCとケータイでメールアドレスには同じものを使いたいという人が増えているのではないか」。福田氏は、今回の新サービス開始の意図をこう説明する。「これを作りました、これを使ってくださいという押し付けや、供給側の論理ではなく、お客さまが自分で使いたいコンテンツ、サービスが使えるようにしていく。その鍵が相互接続で、今後も新サービスを次々と投入していきたい」(福田氏)とし、MVNO事業に意欲を見せる。
iモードに相当するモバイルコンテンツ向けのプラットフォームレイヤでのMVNO事業は世界的に見ても初めての試み。MVNO市場が立ち上がればサービス間の競争が活発になり、産業が活性化すると期待されている。こうしたオープン化の流れについて福田氏は、ユーザーメリットという視点から、こう語る。「ケータイがオープンになるということは、お客さまが自分で使いたいコンテンツやサービスが使えるようになるということ。T型フォード時代の自動車が画一的デザインによる大量生産だったように、高度な技術を使うケータイも1社提供による画一的なサービスだった。しかし、これからはクルマと同様に1台1台カスタマイズできるようになる」。
同社は今後、ニフティやビッグローブなどのISP向けとして同様のサービス展開を検討しているほか、NTTドコモだけでなく、KDDIやソフトバンクモバイル、ウィルコムといったキャリアとも相互接続を進める考えだ。協議中のキャリアの中には「ほぼ快諾で技術的な話し合いをしているところもある」という。また、ケータイメールになじんだ若年層向けとして大学などの教育機関へのパッケージ販売も積極的に展開していく。
法人向け市場ではモバイルカスタム業務アプリも
同社はMVNOとして今回発表したConnectMailのようなサービスを自社で展開するだけでなく、J-Platというプラットフォームを他社に開放し、その上でモバイルサービスを他社が開発・展開するというモデルでも事業を推進していくという。
例えば、同社はすでに大企業や中堅企業向けに、ファイアウォール内に貸与機器を設置して専用線接続するモバイル通信サービスを提供している。業務アプリケーション向けにカスタムアプリケーションを作成して、携帯電話端末で操作しやすいGUIやボタン操作性を実現するといった取り組みも、大手SIベンダとともに始めているという。
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