創業者はフランスのナンバーワンブロガー
“ビデオ版Twitter”のSeesmicはYouTubeを超えるか
2008/02/07
“ビデオ版Twitter”と評されることもあるWebサービス「Seesmic」(シーズミック)が話題だ。現在まだユーザー限定のアルファテスト中だが、ビデオ版Twitterという分かりやすいコンセプトや斬新なアプローチ、創業者の話題性などで注目を集めている。
Seesmicを創業したのはフランスで最も知られたブロガーの1人、ロイック・ル・マール(Loic Le Meur)氏。1972年7月生まれの35才で、これまでに4つのネット系ベンチャー企業をフランスで起業。成功した起業家としても知られる。そのマール氏は、2007年はじめに、ほとんど単身でシリコンバレーのお膝元、サンフランシスコに乗り込んだ。
結局最後はアメリカ企業に潰されるか買われるか
彼は“シリアス・アントレプレナー”と呼ばれるタイプの起業家の典型だ。マール氏は、これまでの売却益などで得た総額を公表していないが、経済的には大きな成功を収めているのは間違いない。いちばん最後に立ち上げたブログサイトの「Ublog」は2004年7月に米シックス・アパートに買収され、自身もしばらくはEMEA地域担当執行役副社長に収まっていた。
しかし、そうした成功に彼はまったく満足しておらず、むしろ、いらだちが強かったという。
昨年の暮れにスタンフォード大学のビジネススクールに招かれたマール氏は、学生たちに向かって、こう言っている(YouTubeの動画)。
「フランスで成功しても、最終的にはアメリカの会社に潰されるか、買収されてしまうかのどっちかなんです。フランスにはイーベイに似たオークションサイトは山のようにありました。でも、今やイーベイだけ。検索サイトもたくさんありましたが、全部なくなりました」。
マール氏は、インターネットで成功したければ英語圏で、できればシリコンバレーでビジネスをする必要があると説く。
「フランスは人口が6000万人。英語圏なら数億人。しかもヨーロッパでサービスを提供してビジネスを拡大するには22の言語に対応する必要があります。さらに、フランスでビジネスをやっている限り、思考はフランスローカルになってしまう。ランチには2時間を費やし、フランス語だけを話し、フランスのことだけ考える」。
ともすればエスノセントリックになりがちなフランス人の自国語への思い入れのようなものは、彼には感じられない。自ら企画し、パリで開催したWeb 2.0系イベントの公用語は英語とし、フランス語を禁じた。唯一フランス語でスピーチをした例外は、彼がネット上のメディア戦略でブレーン役を務めたフランスの現大統領ニコラ・サルコジ氏だけだったという。マール氏は、フランス語は、むしろ断ち切るべき桎梏と捉えているフシがある。強いフランス語訛りで、「インターネットの共通言語は英語だ」と言ってはばからない。
個人投資家から600万ドルの資金を調達
フランスのネット界では知らない人がいないマール氏も、アメリカではまったくの無名だった。しかし、そんな彼でもシリコンバレーは、すんなり受け入れたようだ。
「最初のうち、ヨーロッパとアメリカは同じようなものだと思っていました。でもビジネスのやり方が全然違う。ヨーロッパでは大企業と商談してもらうためには、ゼロから信頼関係を築いていく必要があります。それには5年はかかります。ところがシリコンバレーはまったくプロセスが逆なんです。どんな偉い人でも気さくに話を聞いてくれます。最初は信用が最大値からスタートするわけです。もっとも、少しでもヘンなことを言ったら、それでオシマイですが」。
シリコンバレーのスピード感が、マール氏には居心地がいいようだ。彼は水を得た魚のように動き回る。
「フランスでランチをすれば2時間から2時間半かかる。でも、ここではランチは30分から40分。しかも、例えばTwitterのオフィスは目と鼻の先にある。会社に電話して、一緒にコーヒーを飲んで、それでパートナーシップの話は終わり。もし私がフランスにいて、飛行機で9時間もかかるといったら、そもそも相手にしてもらえるかどうか」。
彼はすでに多くの個人投資家から600万ドル(約6億4200万円)もの資金を調達している。その顔ぶれには目を見張る。Seesmicに投資している主な人物には、スカイプ創業者の2人であるニクラス・ゼンストローム氏とヤヌス・フリス氏、AOLでCEOを務めていたスティーブ・ケース氏、グーグルの初期投資家として知られるロン・コンウェイ氏、LinkedIn創業者のリード・ホフマン氏、技術系ブログTechCrunchの著名ブロガー、マイケル・アーリントン氏などがいる。
プロトタイプなし名前も未定。アイデアだけでスタート
もちろん、いくら彼がアメリカで無名だったとはいえ、4つのベンチャー企業を成功させたという実績があったわけで、彼が本当に何もないゼロからスタートしたとは言えない。
しかし、それでもマール氏は「信用が最大値からスタートする」というカルチャーの中、見事にWeb 2.0の波に乗ったかに見える。@ITのメールインタビューの中で、彼はSeesmicのスタート時をこう振り返る。
「文字通りゼロからのスタートでした。Seesmicは、2007年5月の時点では私の頭の中のアイデアに過ぎませんでした。最初に雇ったのは非常に優秀なCTOです」。
2007年10月のはじめ、マール氏はYouTube上にチャンネルを開設して、自己紹介のビデオを投稿した(YouTubeの動画)。ビデオの中で彼は自分がフランス出身の起業家であることや、ビデオに関係したベンチャーを立ち上げようと考えていることなどを明かす。映像の中で、彼は借りたばかりのシリコンバレーのオフィスもすべて紹介している。まだ椅子も机もなく、ペンキも塗っている最中だ。「今夜はこれからIKEAに家具を買いに行くよ。このオフィスはまだ鍵もかからないので、ここにはまだパソコンも置けないんだよね!」と、いかにも楽しそうに笑う。「ここを撮影スタジオにして、ここにソファを置いてブロガーに来てもらうんだ」。
ビデオのタイトルは「Day 1」。この原稿を書いている2008年2月7日現在、最新のビデオは「Day 75」。今にいたるまで彼はほぼ毎日必ずこのベンチャープロジェクトの進捗についてビデオを公開して報告している。Loic.tvと名付けられたこのYouTube上のビデオには、新しく加わったチームメンバーや、オフィスに遊びに来たブロガー、プロジェクトに共感して、飛行機で飛んできて内装を手伝ってくれた大工なども映像に登場する。先日行われたダボス会議に参加したマール氏は、会議の様子を伝える映像まで公開している。
ビデオを見て共感した人が、次々とチームに加わった。現在、5つの国にまたがって15人のチームメンバーがいるという(ちなみに日本人メンバーも募集しているそうだ)。メンバーには開発者だけでなく、映像制作のエキスパートもいて、Loic.tvのクオリティはみるみる向上している。頻繁に出演しているマール氏とそのパートナー役の2人はまるでコメディアンのようで、「こんなフランス人と働いてみたい人、いる?」という問いかけが奏功したのもよく分かる。
Seesmicプロジェクトを推進しているのは社員ばかりではない。Loic.tvのイントロで使われている音楽は、Seesmicコミュニティからの貢献だし、Seesmicの追加機能のアイデアも、コミュニティから出てきているものが多いという。Seesmicにはバグ報告ボタンのほかに、機能リクエストボタンがある。私が使い始めてからも、2度ほど大きなバージョンアップを行い、急速に進化しているのが分かる。
今のところ、Seesmicは限定的にユーザーを募っているだけでユーザー数は多くない。アカウント発行を待つリスト登録者は1万を超えているが、サーバ負荷の問題などを含めて、ユーザー数を抑えているのだという。小さくこぢんまりした「コミュニティ感」が損なわれると心配するアクティブユーザーも多く、マール氏は、そうした声にも耳を傾けている。
アイデアの求心力だけで成長がスタート
Seesmicのアプローチがユニークなのは、その透明性だけではない。起業方法そのものも斬新だ。
当初、マール氏には映像のコミュニティを作るという曖昧模糊としたアイデアはあったが、Day 1の時点ではプロトタイプはなく、サービス名称すら決まっていなかった。まだ何もない段階からアイデアを公開して、すべてが転がり始めた。
すでに資金を調達してアルファ版サービスを開始した2007年10月の時点ですら、将来どうやってマネタイズするつもりなのかという問いに対して「まったく分からない」と実に正直に応えている。その時点であったのは、まだ貧弱な機能しかないサービスの実装と「ここで何かが起ころうとしているとみんなが感じている」という事実だけだった。
Web 2.0的なサービスの特徴として「永遠のベータ」ということがよく言われる。完成品を出すのではなく未完成品を公開し、サービスとして走りながら永遠にバージョンアップしていく、という考え方だ。サービスの公開は早ければ早いほどよい。バージョンアップリリースの頻度も高ければ高いほどいい。
そうした文脈でいえば、Seesmicは究極にまで公開を早めたプロジェクトといえるかもしれない。もはやベータ版ですら遅すぎる。アイデアを伝えるための、いわゆる“コンセプトプルーフ”の実装すら要らない。アイデア段階で、それをできる限り広く共有して育てろということだ。
Wikipedia創始者のジミー・ウェールズ氏が2008年1月7日に始めた検索エンジン作成プロジェクト「Wikia Search」にも似たところがある。使ってみて驚いたが、フリーソフトウェアの検索エンジンインデクサ、分散処理フレームワーク、SNSをくっつけただけのWebサイトで、肝心の「多数のユーザーが集まって最適な検索結果を作りあげていく」ということの意味を具体的に感じさせてくれるソーシャルな機能がまったく実装されていなかったのだ。検索結果で表示されるリストの横に星マークがあるので「なるほど」と思ってクリックしてみると、「まだこの機能は実装されていません」というポップアップが表示されるばかり。ウェールズ氏本人はリリース当初は驚くような機能が何も実装されていないことを公言していたが、期待が膨らみすぎたこともあり業界からの反応は否定的なものが多かった。
しかし、Wikia Searchが公開を遅らせるべきだったかどうか、分からない。例えば、星マークをクリックして検索結果に何らかのフィードバックを与える仕組みを作るにしても、実際どうすればいいのかを話し合って決めるというアプローチはあり得る。本当に大切なのはコンセプトに共感する人がいることや、コンセプトの実現性を信じる人がどれだけいるかではないか。Wikia Searchでは、検索結果ごとに用意された掲示板で、検索結果がどうあるべきかについて議論をしている人が、すでに見受けられる。
Wikia Searchはコンセプト自体に実現性があるかどうか不明だ。しかし、コンセプトに説得力があるなら、公開は早いほうがいいというマール氏の言い分は傾聴に値するだろう。マール氏は自らの起業体験を元に「スタートアップ成功のための10のルール」というエントリをブログに書いている。早い時期にアイデアを共有したほうがいいということのほかに、マーケットリサーチやビジネスプランに時間や労力をかけすぎるなということも言っている(スタートアップ成功のための10のルール【TechCrunch日本語版】)。
SeesmicはYouTube+Twitter+SNS+……?
「ブログやコミュニティサイトが話題です。でも、どうして映像を使ったものがないのでしょうか?」。有望なベンチャー企業が集まり、それぞれ6分という短い持ち時間で自社製品やサービスをアピールするイベント「DEMO 2008」のステージで、マール氏は聴衆にそう語りかけた(YouTubeの動画)。
Seesmicは映像を使い、顔と顔をつきあわせた会話を行うコミュニティサイトだ。従来の動画サイトとの違いをマール氏はこう説明する。「オーストラリアに住むSeesmicユーザーが指摘するように、YouTubeとは“ビデオ”のサイトです。一方、Seesmicは“ビデオの中に映る人”のサイトです」。
TwitterやYouTube、SNSを使ったことがある人なら、Seesmicの説明は簡単だ。ログインすると、左側に映像リストのサムネイルが、右側にユーザプロフィール関連の情報が並ぶ。中央のプレーヤーで再生中の動画の投稿主の名前やプロフィールは右側に表示される。ここで表示されているユーザーを「友だち」として自分のリストに追加したり、Twitterのように「follow」することができる。画面右側にはこのほか、活発に議論されているテーマや新着情報などが表示される。
左側の映像リストは「Public」(全体)、「Friends」(友だち)、「MyVideos」(自分の映像)、「Replies」(返信映像)の4つのタブがある。つい最近追加された機能だが、映像リストのサムネイルには「24 replies」などと返信がついた数が表示される。これらの返信は時系列に「スレッド」にまとめられる。スレッドの映像は連続再生することができる。例えば米国大統領選について、さまざまな人が他人の意見を受けて自分の意見を述べていたりする。そうした連続性のある複数人の意見交換をワンクリックで見ることができるというわけだ。
もちろん、多くの会話は政治に関するものなどではなく雑談のような感じだ。現在、フランス語と英語のコミュニティが大きいが、ヨーロッパの言語のほかにも日本語や韓国語など25の言語(国)のコミュニティがあるという。日本語コミュニティは私が見たところ、ほんの数人の日本人と日本語学習中のアメリカ人が少しいる程度だ。
動画を公開するにはPCに接続したウェブカメラを用いてその場でキャプチャするか、既存の動画をローカルPCからアップロードするかが選べる。YouTubeの映像を流用することもできる。Seesmicは動画投稿サイトではなく、動画を使った会話のサイトだから、外部のコンテンツの流用は歓迎だという。動画がどこにあるかは問題ではない。動画による会話の流れが重要で、そうした場を提供するのがSeesmicというわけだ。マール氏は「あなたのデータは、すべてあなたのものです」と話していて、コンテンツを囲い込む気がない。
動画の公開方法は機能的にはYouTubeと同等だ。ただ、すでにPC上のファイルとなっている動画をアップロードすることを前提としたYouTubeと異なり、基本的にはリアルタイムで自分の顔を録画するというのがSeesmicの特徴だ。
こうした特徴をよく表しているのが、中央上部の目立つ場所に赤い丸で録画ボタンを配置したインターフェイスだ。Seesmicが提案しているコミュニケーションスタイルは、誰かが言ったことに対して、何か反応したければ、その場でボタンを押して、PC(カメラ)に向かって話すというものだ。実際、公開されているほとんどの映像はPCの前でウェブカメラに向かって話した数秒から数分の映像だ。
YouTubeでも動画を使った返信は可能だ。すでにフェイスツーフェイスのコミュニケーションの場として使っている人もいる。ただ、インターフェイス設計上の問題と、コミュニティの性格付けからか、あまりそうした使い方は一般的ではない。YouTubeの動画の多くは「何か見せたいものを撮影→PCに取り込み→編集→アップロード→ほかのユーザーからのテキストによるコメント」という流れになるが、Seesmicは「ほかのユーザーの話を聞く(見る)→返信ボタンで話す(録画する)」という流れだ。
会話の流れ(スレッド)を生まれやすく、また追いかけやすくした動画コミュニティは、これまであるようでなかった。先に紹介した「スタートアップ成功のための10のルール」で、メール氏はこう指摘している。「画期的なアイデアを待ってはいけない。そんなものは絶対出てこない。シンプルで、エキサイティングで、手つかずの領域に集中して、できる限り早く実行に移せ」。映像を使った会話コミュニティという発想は画期的ということはないが、確かに誰もやっていない、ぽっかり空いた穴のような領域だったかもしれない。
今後、Seesmicでは映像にタグを追加できるようにするほか、テーマごとのグループ作成機能も追加するという。
新しいテレビの形
Twitterのようなミニブログサービスが「テキストによるつぶやき共有」という以上の用途を見つけつつあるように、Seesmicは「映像による会話」以上の何かを、すでに萌芽としてとして内に秘めている見える。少なくともその1つとして、Twitter同様の使い方がある。友人や気になる人を「follow」して、直接的な会話ではない緩やかなつながりによるコミュニケーションを、映像を介して行うという使い方だ。
モバイルと結び付けば、その可能性は広がる。SeesmicのAPIは公開されていて、すでにモバイル版クライアントを実装したオーストラリア人がいる。こうしてTwitter同様に、創業者やプロジェクトチームが考えつかなかったような、さまざまな使われ方が登場する可能性がある。中期的に考えれば、ビジネス領域での利用も十分にあり得るだろう。イノベーションは消費者向けサービスで起こり、エンタープライズがそれを後追いするという法則は、ここでも当てはまるように思える。少なくとも、そうした諸々の可能性を感じる人がいなければ、6億円もの資金は集まらないはずだ。
マール氏は「Seesmicが何であるか」を、それほど明瞭に語っているわけではない。考えても分からないし、設計してもそうはならないし、今後のアイデア次第で進化するものという直感があるのだろう。
ただ、いたるところで氏が言及しているのは、「テレビが変わる」ということだ。テレビというメディアは誕生以来50年間、本質的には何も変わっていないが、今はそのテレビと、それを見るわれわれの関係が変わる時期だというのだ。
テキストベースのWebの世界では、商業コンテンツとブログのようなCGMコンテンツが入り交じり始めている。同様に、映像でも今後はプロが制作するコンテンツとCGM的なコンテンツの境目が曖昧になり、相互に参照する可能性が高い。とすれば、何かのテーマでスレッドに沿って映像を見るとき、それが商業コンテンツをシードに発達したCGMチャンネルのようなものである可能性もある。Seesmicがプラットフォームであるならば、テレビ局が流すニュース映像に対してコメントの映像スレッドが立つこともあり得る。特定のアーティストのファンたちが会話するスレッドに、アーティスト本人が“降臨する”ようなケースもあっていいかもしれない。ブログの登場によってアーティストとファンがダイレクトにつながるパイプができたが、それが映像となれば、なおファンには楽しいことだろう。
陽気で外向的なマール氏は、テレビ向けの才能も持ち合わせていて、見方によっては率先して範を垂れているように思われる。Day 1から続けているLoic.tvを見ていると、しきりにコミュニティに語りかけ、ユーザーのコメントを映像中に挟み込むことも盛んに行っている。例えば最近だと、自動車の運転免許試験で落とされたことを陽気に語り、アドバイスを求めていたりする。そしてその後投稿されたアドバイスを映像中で効果的に使う、といった手法だ。電話でリスナーが参加するラジオ番組では古くからある手法に似た印象だ。Loic.tvは個々の映像自体が1つの会話スレッドのようになっていて、参加型エンターテイメントという印象もある。
こうしたホスト役のようなことをマール氏以外でやっていけるような人がたくさん出てきて、それぞれがチャンネルを立てるようになればおもしろい。それは、すでに一部ブログの世界でテキストベースでは起こっていることでもある。Seesmicのようなインフラがあれば、朝まで生テレビのような討論を著名ブロガーがホストできる可能性もあるだろう。
日本に映像コミュニケーションを受け入れる素地はあるか
たとえSeesmicが英語圏で成功したとしても、日本語圏で、こうしたサービスが受け入れられる素地があるだろうか。インターネットユーザーの多くが匿名で、SNS内ですら顔写真も出さない日本のユーザーを見ていると、どうも懐疑的にならざるを得ない。そのことをマール氏に指摘したところ、彼はこう答えた。
「残念ながら文化的な違いをコメントできるほど詳しく分かりませんが、過去のシックス・アパートでの経験から、日本のみなさんがブログやモバイルに非常に熱心だということを理解しています。ですから、日本のコミュニティが立ち上がるのをとても楽しみにしています」。今後は翻訳や、日本語コミュニティ向けにインターフェイス全体を適応させることなども含めて、日本語コミュニティをサポートしていくといい、とても立ち上げに積極的だ。@IT読者に100個分のアカウントを提供するとのオファーも受けた。
ネット上での顔が見えるコミュニケーションが、これまで大きく成功した試しはない。CUSeeMeやNetMeeting、ビデオ付きIMなどは、どれも一部の熱狂的なユーザーをのぞくと、地理的に離れた肉親との会話など限定的な使われ方があるだけだった。一時流行したノートPCへのウェブカム搭載も、いつの間にか減ってきた。
ただ、そうした過去のいくつもの失敗と、今回のSeesmicが違うのはタイミングだ。ユーザーはYouTubeを知っていて、TwitterやSNSも知っている。Seesmicを、それらのごく自然な延長だと捉えれば、今度こそ映像コミュニケーションが本格的に花開く可能性があるようにも思える。
Seesmicという名称には「See」(見る)と「Mic」(マイク)という語が含まれている。また「seismic」(地震の)という形容詞と同音で1字違いの言葉遊びにもなっている。果たしてSeesmicは新しいコミュニケーションスタイルを広げる、その震源地となりうるだろうか。
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