ベータ版公開

コラボレーションの新地平か、「LUNARR」を使ってみた

2008/02/08

 あるプロジェクトを進めるときにメールにドキュメントを添付してメンバー間でやり取りする。ローカル環境でドキュメントを更新して再びメンバーに送信する。そのうちにほかのメンバーからもドキュメントの直しが入り、あれ、どのドキュメントが最新だっけ? このような混乱がいたるところで起きている。分かりやすくするためにドキュメントのファイル名に日付を入れたりして。ベータ版を公開した新しいコラボレーションツール「LUNARR」が解決しようとするのは、メール主体のコラボレーションの問題だ。

lunarr06.jpg LUNARR CEOの高須賀宣氏

 最近感じるのはメールはコミュニケーションの手段であって、コラボレーションの手段ではないということだ。1対Nの一方通行のやりとりならメールで十分。しかし、N対Nならすぐにパンクする。LUNARRは、「ドキュメントという1つのテーマでメールをまとめる」(同社 CEOの高須賀宣氏)ことでN対Nのやり取りの質を上げる。

 LUNARRを語る上で外せないのは“表と裏”の考え。ドキュメントが表であり、裏にはメール機能がある。ドキュメントはサーバ上に1つだけあり、そのドキュメントに関連するメンバー間のメールが裏にまとめられている。例えば、ドキュメントを編集したら、これまでのようにメール添付で送信するのではなく、ドキュメントの右上にある「ドッグイヤー」をクリックして、裏返し、メールをメンバーに送信する。メールはドキュメントが更新されたことを伝える役割を持つ。そのため、メンバー間でどれだけメールがやり取りされてもドキュメントは1つだけ。ドキュメントの変更履歴も確認でき、プロジェクトの進捗をメールと変更履歴で確認できる。

真っ白なインターフェイス

 実際にLUNARRを起動するとそのシンプルなインターフェイスに驚く。最初に目にするのはほぼ真っ白な画面だ。高須賀氏は「シンプルなUIを目指した」と語る。ユーザーが操作するのはページ下部にあるメニュー。まずはすべての基になるドキュメントを用意しないといけない。LUNARRは、LUNARR上にあるドキュメントをコラボレーションの対象にする。記事「新コラボサービス『LUNARR』が地球の“表と裏”でベータ開始」でも書いたが、ドキュメントに関してLUNARRは3つの機能を用意している。「ファイルのアップロード」「Webページのインポート」「ドキュメントの新規作成」だ。

lunarr01.jpg ログインしたときに表示されるLUNARRのインターフェイス。少し驚く

 ファイルのアップロードはMicrosoft Office文書やPDF、テキストファイルが可能だ。アップロードされたドキュメントはFlashに変換され、Flash Paperに似たインターフェイスで閲覧できる。ドキュメントを編集する際は1度ローカルにダウンロードする必要があるが、Word、PDF、テキストファイルはコンバート(データ変換)すればオンラインで編集できる。

lunarr02.jpg PDFファイルをアップロードしてLUNARRで閲覧。ページ繰りはスムーズ

 2つのWebページのインポートは用途が広い機能だ。この機能は閲覧中のWebページやWebアプリケーションのスクリーンショットを取って、ほかのユーザーと共有できる。ブックマークレットも用意している。単なるスクリーンショットではなく、オンラインで編集できるというのがミソ。作成中のWebページやWebアプリケーションのレビューなどに利用できるだろう。

lunarr03.jpg @ITのトップページを取り込んで編集する。下部のワープロツールで文字を追加できる

 3つ目のドキュメントの新規作成は、スクラッチからドキュメントを作成する。用意されているワードプロセッサのツールを使って1からドキュメントを作成することもできるし、いくつかのテンプレートを使うこともできる。ワープロツールは「Google Docsと同じような機能」(高須賀氏)だ。

lunarr04.jpg テンプレートを使ってスクラッチでドキュメントを作る。これは仕様書のテンプレート

ドキュメントとメールの結束点

 LUNARRが企業内で使用されるようになるには、いかにドキュメントをLUNARR上にアップロードさせるかがポイントなる。しかし、高須賀氏は「(ドキュメント機能は)あんまり頑張るつもりはない」と語る。なぜか? LUNARRは、ドキュメントとメールという性格が異なる2つの存在の結束点を提供することに主眼を置いているからだ。高須賀氏は「表は何でもいい」と語る。機能がリッチに越したことはないが、注力するエリアではない。

 ドキュメント機能は、Microsoft OfficeやGoogleドキュメントに相乗りしてもいいし、LUNARRの機能をモジュール化して、OfficeやGoogleドキュメントに組み込むことも考えられるだろう。LUNARRが狙うのは、ドキュメントとコミュニケーションツールを結合させることによって「メタ情報をリッチにし、情報自体の価値を高める」(高須賀氏)ことだ。現在はメール機能をサポートしているが、メタ情報の取得を考えるとインスタントメッセージやTwitterなど別のコミュニケーション手段の提供もあるのではないだろうか。

 メタ情報をリッチにする意味で重要になるのは、メールの送受信履歴やドキュメントの共有者、関連ドキュメント、変更履歴、参照履歴などが確認できる裏側のメール画面だろう。これらのメタ情報はコミュニケーションに意味を与えて、コラボレーションをよりよい方向に導く材料になる。

lunarr05.jpg メール画面から確認できるドキュメントの変更履歴

 LUNARRは2009年に有償化して、ビジネスを本格化させる。ベータ期間中はユーザーからのフィードバックを得て、機能やインターフェイスの改善に注力する。2009年2月までに10万人の獲得を目指す。技術動向に敏感な一部の先進ユーザーをトリガーにLUNARRのユーザーコミュニティを盛り上げ、その波を一般ユーザーに波及させることを狙っているようだ。LUNARRのコンセプトに共感し、期待する声は多いだろう。LUNARRがその声をどう受け止め、使いやすく、新しいコラボレーションの仕組みを提案できるか。この1年が勝負だ。

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(@IT 垣内郁栄)

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