月額基本通話料は無料

イー・モバイルがHTC製端末など音声対応端末を発表

2008/02/25

 HSDPA接続による3.6/7.2Mbpsの高速無線データ通信サービスを開始して約1年。イー・モバイルが、いよいよ音声通話サービスを開始する。2月25日に都内で会見を開いた同社は、3月28日に携帯番号ポータビリティによる申請を含めた携帯電話サービスの開始をアナウンス。同時に、HTC社製のスマートフォンと東芝製の折りたたみ式端末の2台の携帯電話端末を発表した。

em01.jpg イー・モバイル初の携帯電話端末の1つ、HTC製のスマートフォン「S11HT(EMONSTER)」
em02.jpg イー・モバイル初の携帯電話端末の1つ、東芝製の「H11T」

高速データ通信を中心に据えたビジネスモデル

 「既存の携帯電話キャリアは音声サービスを主軸にして、そこにデータを付け加えている。しかし、モバイルの世界は急激に高速インターネットの世界に移ろうとしている。十数年かけて主軸が変わっていくと確信している。だから既存キャリアの他社とはまったく逆に、われわれは世界の一歩先を行って、モバイルブロードバンドを中心に据える。そこに電話(音声サービス)を付け加える。これは革命的なサービスで、これまでの料金体系を一挙に覆す」。高速無線データ通信サービスで快進撃を続けるイー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏は、音声データサービスに当たり、そう宣言した。

em03.jpg 電話の月額料金0円という料金体系を発表するイー・モバイル代表取締役会長兼CEO 千本倖生氏

 電話基本料金0円、パケット通信の月額料金は1000円から――。

 同社が打ち出した新料金体制のベースとなる「ケータイプラン」は、携帯電話として初めて電話基本料金を無料とした。データ通信料は基本使用料が月額1000円、上限金額は4980円(新にねんプランの場合)。通話料は固定・ケータイの通話ともに18.9円/30秒、SMS送信料は1通当たり2.1円。

 この基本料金に月額980円の「定額パック24」を加えることで、イー・モバイル同士の通話が24時間無料、SMS送信料無料となるほか、通話料金も携帯電話宛てが9.45円/30秒、固定電話宛てが5.25円/30秒となる。加入制限のない定額料金で同水準のプランで比較した場合、「他社は1分当たり40円。圧倒的に安い通話料金を提案する」(千本氏)という。

 オプションでNTTドコモグループによる国内ローミング(月額105円)や、GPSナビ(月額315円)、割込通話(月額210円)などを用意するものの、他キャリアのような家族割引やポイント制は用意しない。このことについて千本氏は、「割引やポイント制は複雑怪奇で、普通の消費者には、ほとんど分からない状況だ。通話についても時間帯の制約があったり、無料通話があったり、多種多様な割引サービスがある。私から見ても、(各社のケータイサービスの料金体系が)一体どうなってるのか分からない」と話した。

 また、すでにデータカードやモバイル端末EM・ONEで同社サービスを利用しているユーザーや、こうしたデータサービス利用を考えているユーザーには「ケータイプランデータセット」を用意。セットで契約した場合、一律1000円の割り引きを適用し、「既存ユーザーは追加料金なしでケータイを利用できる」(千本氏)という。

まずは2台目利用のユーザー獲得を狙う

 日本のスマートフォンユーザーの70%は2台目利用――。そうした数字を紹介しつつ、千本氏は今回の新端末を、まずは2台目として利用するユーザー層に訴求したいと話す。「ルクセンブルクや香港、イタリアなど、ケータイの普及率が100%を超えている国は多い。日本の普及率は79%程度で50位。国内の携帯電話端末市場は飽和した飽和したとみなさんおっしゃるが、私はまったくそうは思わない。日本より普及している国が49カ国もある」(千本氏)。安い通話料などを目当てに恋人同士や家族で2台セットで2台目を購入する“ペア電話”も増えていて、まだ端末市場は伸びると見ているという。

em04.jpg イー・モバイル代表取締役会長兼CEO 千本倖生氏

 今後、1台目としてユーザーに選ばれるためには、おサイフケータイなど、日本市場固有の機能が欠かせないのではないか。会見の席でそう尋ねられた千本氏は、いらだちを隠さずに次のように答えた。「あれはグリコのおまけのようなものだ。そんなものを作っているから(日本の携帯電話端末の)国際競争力がなくなる。(グローバルな市場で)誰があんなものを買いますか。われわれが狙っているのはオープンでグローバルな市場だから、おまけは不要。世界で通用するものを作っていく。日本の端末メーカーが世界に出て行けるように、というのが基本的な考えだ。日本の携帯電話は開発のやり方に根本的な問題がある。端末1台の開発に何百億円もかけて誰ももうからない。その開発費のためにメーカーの体質が疲弊していて海外にも出られない。そうした開発のやり方が、かつての王者だったNECやパナソニックといったメーカーを世界のなかで弱小メーカーにしてしまった。サムスンやノキアが30%とか40%の世界シェアを持っている一方、日本の携帯電話メーカーのシェアはごくわずかだ。こうした内向きの“ウォールガーデンモデル”では世界のシェアに決して到達できない。グローバル市場に対して、どう端末を作っていくのか。日本にいてぬくぬくやっていてはいけない」。

今回の第1弾は「小出しの状態」

 イー・モバイル初の音声対応端末は、台湾HTC(High Tech Computer Corp)社製「S11HT(EMONSTER)」と東芝製「H11T」の2機種。3月1日から予約を開始し、3月28日から従来通り家電量販店とオンラインショップを中心に販売する。

 初期費用は契約事務手数料の2835円のほかに一時払い金としてS11HTが6万7980円、H11Tが5万7980円を支払う。長期契約の「新にねんプラン」利用の場合はS11HTが4万3980円、H11Tが3万3980円。また、「ご加入アシストにねん」を利用すれば、毎月1000円を2年間支払うことで一時払い金から2万4000円の割引適用を受けられる。

 S11HTは日本以外の市場では「タイタン2」のブランド名で販売されている端末で、HSDPA通信による下り最大3.6Mbpsの通信に対応する。Windows Mobile 6 Professional Edition日本語版を搭載、スライド式に開くQWERTYキーボードを備える。液晶画面は2.8インチQVGAのタッチスクリーンタイプ。キーボードとディスプレイのアングルをチルトさせることができる。GPS機能を内蔵し、モバイルGoogleマップと連携できる。また、300万画素カメラ、IEEE802.11b/gの無線LAN、Bluetooth 2.0対応。microSDスロットを備える。

 H11Tは2.8インチワイドQVGA(400×240ドット)液晶を備えるワンセグ対応機。324万画素カメラ搭載で、手ぶれ補正機能も備える。HSDPA通信による下り最大3.6Mbpsの通信に対応する。

 S11HT、H11Tとも、USBケーブルでPCと接続して高速データ通信が利用できるほか、Bluetooth経由で通信モデムとして利用することもできる。

 今回発表した2つの端末について千本氏は「今回は第1弾に過ぎず、まだ小出しの状態」としているが、今後の端末開発の具体的な戦略やラインアップについては「ノーコメント」と話している。

関連リンク

(@IT 西村賢)

情報をお寄せください:

アイティメディアの提供サービス

キャリアアップ


- PR -
ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

ハッシュタグはオワコン? イーロン・マスク氏も「使うな」と投稿、その意図は……
ハッシュ記号(#)とキーワードを連結させることで投稿のトピックを明示する「ハッシュタ...

mixi2で「企業アカウント」を始める前に知っておきたい3つのポイント
2024年末に電撃デビューした国産SNS「mixi2」。企業の新たなコミュニケーションチャネル...

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2024年12月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。