仮想化の活用で止まらないサービスを実現

NTTがNGNに採用、シスコが新エッジルータを発表

2008/03/05

 シスコシステムズは3月5日、新開発のネットワーキング・チップを採用した「Cisco ASR 1000シリーズ アグリゲーション サービス ルータ」シリーズを発表、さらにNTTグループが同製品をNGNインフラに採用することを明らかにした。

 シスコの社長兼CEO、エザード・オーバービーク(Edzard Overbeek)氏は、新製品について「私は個人的に、これは当社がどう日本の社会に貢献できるか、今後の新しいサービスやソリューションを実現できるネットワークの構築により日本の競争力をどう高められるかを認識してもらえる重要な発表の1つだと信じている」と力説した。

cisco01.jpg シスコ 社長兼CEO、エザード・オーバービーク氏

 オーバービーク氏は日本の情報通信がブロードバンド化やネットワークの活用で最先端を走っているとし、これを支える通信機器も、今後の「クアッドプレイ」(データ、音声、動画、モバイル)から「エニープレイ」(何でもつながり、双方向で通信する)への展開をサポートできるものでなければならないとする。ASR 1000は、そのための製品なのだという。

 ASR 1000は、通信事業者におけるIP/MPLSコアのエッジで、ユーザーに提供するIPサービスの集線/統合の役割を果たす製品だ(企業における拠点間WAN接続の中心としての利用も想定)。価格的には「Cisco 7200」「ISR」と「Cisco 7600」の間の「スイートスポット」(オーバービーク氏)に位置する。

 第1の特徴は、新開発のネットワーキング・チップ「Cisco Quantum Flow Processor」を採用した高機能な「エンベデッドサービスプロセッサ」(ESP)モジュールだ。モデルによって異なるものの5Gbpsあるいは10Gbpsの帯域容量を実現、将来は新チップによって40Gbpsの実現も視野に入っているという。このフォワーディングプロセッサではIPsec、ファイアウォール、レイヤ4以上の情報も検知できるディープ・パケット・インスペクションなどを、機能特化型ボードの追加なしに実行できる。ハードウェアベースのQoS機能もこのモジュール上で実現し、次世代ネットワーキングサービスの要件に対応する。

cisco02.jpg サイズの小ささも訴求ポイントの1つ(写真は最上位モデルの6RU)

 ルーティング・ソフトウェアは同社のこれまでのIOSを移植したものだが、止まらないサービスを実現するための工夫も見られる。まず、仮想化技術によって2つのソフトウェア・インスタンスを用い、ルータを稼働させたままソフトウェアのアップグレードやパッチ当てができる。スタンバイ用のインスタンスにまずアップグレードを適用、次にこれをアクティブに切り替え、これまでアクティブだったインスタンスをスタンバイにしてアップグレードを適用できる。同じ仕組みを使ってソフトウェア上のフェイルオーバも実現できる(最上位モデルではモジュール間のフェイルオーバも可能)。「アクティブ―アクティブ」ではなく「アクティブ―スタンバイ」構成だが、「切り替え時間は50〜100ミリ/秒」(シスコ プロダクトマーケティング プロダクトマネージャ 水谷雄彦氏)という。

 シスコではこの製品の環境への優しさも強調している。ASR 1000は3モデルで構成されているが、それぞれ2U、4U、6Uと小型。にもかかわらず、従来はWANルータ、ファイアウォール、VPNゲートウェイ、侵入検知などのボックス製品を組み合わせなければならなかったような機能を、可用性を確保しながら実現できる。ポート当たりの消費電力はCisco 7301と比較して46%削減したという。エアフローは前面から背面に抜けるようにし、側面排気で必要なラック間スペース確保を不要とした。

 ASR 1000は4月に一般販売を開始する。最小構成(ポートモジュールなし)の参考価格は469万9000円。

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(@IT 三木泉)

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