多層請負構造を作らない仕組み
フリー技術者に朗報か否か、首都圏コンピュータがJV方式導入
2008/03/10
フリーランスのITエンジニアを支援し、開発業務の共同受注を行っている首都圏コンピュータ技術者株式会社(MCEA)は3月10日、同社とフリーのITエンジニア、そしてシステム・インテグレータ(SIer)とがジョイントベンチャーを組んで、開発業務を共同受注する取り組みを新たに始めると発表した。これまで個人事業主であるフリーエンジニアとMCEAとの共同受注だけだったが、新たにSIerとも手を組み、より大規模な開発案件を受注できるようにする。同社はこのジョイントベンチャー方式によってIT業界の悪弊といわれる多層請負構造が構成できなくなるとしている。
MCEAは当初、個人事業主のフリーITエンジニアによる協同組合だったが、協同組合法の改正によって組合員が1000人以上の協同組合は「上場企業以上の透明性が求められるようになった」(MCEA 代表取締役会長 横尾良明氏)ことで、2007年10月に株式会社化した。横尾氏によると、協同組合時代のMCEAは組合員からの出資金を遅れて徴収したり、仕事がない時期には組合費を徴収しないなど「制度を曲げている」(同氏)状況があった。協同組合に対する監視が厳しくなり、「いままで組合員にとってよかれと思っていたことを続けるには組織を変えるしかない」(同氏)と判断したという。
さらにMCEAは2007年12月に関連の中堅、中小のソフトウェア会社8社と合併した。MCEAと契約する個人事業主のITエンジニアは1800人。
新たに開始するジョイントベンチャー方式では、発注企業から見ると構成企業、構成員はすべて同等。契約を行う代表企業は置くが、代表企業とそのほかの構成企業や個人事業主のフリーエンジニアは、元請や下請けの関係ではなく対等なパートナーであるしている。さらに構成企業や構成員の参加は、発注企業と全構成員の了承によって行う。構成員同士も運用規則を結び、開発が混乱しないように役割を分担する。
MCEAの代表取締役社長 真杉幸市氏は「ジョイントベンチャーの構成員で役割分担をして1つの組織を作る。それによって発注企業は構成員の顔が見える」と話し、偽装請負などの不透明な開発が下請け先で行われることを防げると説明した。また、ジョイントベンチャーに参加する個人事業主のフリーエンジニアは自分の名前で仕事を行うことができ、モチベーションを高められると話した。
真杉氏は「誤解されると困るが、元請から下請けに仕事が切り出されて流れていくという構造は何も問題がない。そうではなくて元請のプロジェクトが人を求めて、下請けから人を持っていくのが大きな問題」と偽装請負こそがIT業界の問題と指摘。そのうえで、新たに始めるジョイントベンチャー方式での受注は「このような多層請負を作らない」と話した。ジョイントベンチャー方式は「建設業界では普通にしていること。それを今日から行っていきたい」と話した。
ジョイントベンチャー方式でも開発のプロセスの中で個人事業主が不利な立場に置かれたり、構成企業が独自に下請けを使うケースが考えられる。真杉氏は構成員同士の契約をしっかり結び、役割分担を行うことで避けることができると説明した。
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