米アスペクト・ソフトウェアがMSと戦略提携

MSも本気、コンタクトセンターをUC市場の突破口に

2008/03/28

 米アスペクト・ソフトウェアが3月18日に発表したマイクロソフトとのアライアンス締結が、今後のユニファイド・コミュニケーション(以下UC)市場に一石を投じることになりそうだ。

 コンタクトセンタ・ソリューション「Aspect Unified IP」に、マイクロソフトのユニファイドコミュニケーション・プラットフォーム「Microsoft Office Communication Server 2007」(以下OCS)との相互運用性を確保し、今年12月に対応製品をリリースする。Aspect Unified IPの機能に加え、OCSのインスタントメッセージング機能、在席確認を行うプレゼンス機能が利用可能となることで、コンタクトセンターのオペレータは顧客からの問い合わせに対し、最適な知識を持った社員にコールを回し、1回のやり取りで顧客対応を完了可能になるという。

 日本国内での発表に伴い、来日した米アスペクト シニアバイスプレジデント ストラテジー&マーケティングのマイク・シェリダン(Mike Sheridan)氏は、今回の提携について、「コンタクトセンターの可能性と、UCの有用性を示す格好のショーケースになるはずだ」と力説する。

aspect02.jpg 米アスペクト シニアバイスプレジデント ストラテジー&マーケティングのマイク・シェリダン氏

 「ユーザー企業のコンタクトセンターを対象にした調査では、全問い合わせ件数のうち約10.3%がセンター内で解決されておらず、企業内部での対応が求められていると分かった。また、従来は回答に最適な社員を探す際、場当たり的な要素が強く、スムーズな対応ができない問題も残っていた。だがOCSのインスタントメッセージング機能、プレゼンス機能により、対応に最適な社員へのルーティングを迅速、確実に行えるようになる。オペレータの業務効率向上はもちろん、顧客満足度向上にも大きく貢献する」

 また、社員へのルーティング記録、対応記録の履歴を残したり、対応状況のリポーティングもできるため「対応業務のノウハウ、ナレッジが蓄積され、問い合わせ対応の継続的な効率化や、情報セキュリティ面にも寄与する」。

 全社的な顧客対応をするうえでは、社員の業務効率悪化が懸念される。この点についても、同社が高いシェアを誇っている要員管理製品「Workforce Management」を組み合わせれば、特定のスタッフに対応業務が偏ることを防ぎ、日常業務を阻害することなく、ホスピタリティの高い顧客対応を可能にするという。

 マイク氏は「今回の提携は、コンタクトセンターで培ってきた技術をUCによって企業全体に拡張できる点がポイント」と強調する。「最適な社員にコールを回すインテリジェント・ルーティング機能をはじめ、対応状況のリポーティングやモニタリング、要員管理といった技術はコンタクトセンター内ではすでに実用化されている。顧客満足度向上、効率性向上といった効果も認められてきたが、これをセンター内で完結させず企業全体に適用すれば、消費者、センター、企業間の壁がなくなり、コミュニケーションを大きく変革できる」

 今回の提携でもう1つ目を引くのは、マイクロソフトがアスペクトの株式を取得している点だ。Aspect Unified IPのOCS対応作業もマイクロソフトのスタッフと共同で行い、「綿密かつ高度な連携を期す」という。

 マイクロソフトのUC分野でのシェア獲得に対する本気度の高さがうかがえるが、UCは注目を集めつつも、市場に受け入れられるのはこれからといった感が強い。特に複数のアプリケーションを統合的に運用するUCならではの難しさが課題として挙げられている。

 この点について、マイク氏は「Aspect Unified IPは自動着信呼分配(ACD)、プレディクティブ・ダイヤラー、品質管理といった各種機能をシングルソフトウェア・プラットフォーム上に統合できる。企業内の既存システムとの連携・統合が容易な点も強み」として課題解決の可能性をアピール。

aspect01.jpg 単一のプラットフォーム上に各種機能を統合可能なAspect Unified IP

 企業内コミュニケーションの円滑化と利益増の関係に対する、ユーザーの認識の低さについても「効果が見えにくい点が原因だったのではないか」と分析する。

 「企業内コミュニケーションの円滑化は確実に利益に貢献する。しかし、従来はそれを客観的に測る術がなかった。だがコンタクトセンターでは顧客とのコミュニケーションが利益にどのくらい貢献したか、明確に数値化してきた経緯がある。今後、OCSとの連携により企業内コミュニケーションの利益貢献度を数値化していけば、UCに対する市場の関心はいっそう高まるはずだ」

 アスペクト、マイクロトソフトともに、さまざまな狙いを包含した今回の戦略提携。アスペクトは、今年12月の対応製品リリース以降もOCSとの相互機能を拡張し、ソフトウェアベースの通話機能を追加していく予定。さらにその後も「電話、インスタント・メッセージ、Eメール、Web会議といった異なるチャネルのシームレスな連携、活用を目指して開発を進める」という。

 マイク氏は「弊社自身もグローバル単位でAspect Unified IPとOCSを導入し、顧客満足度、業務効率向上のショーケースとなっていきたい。特に、ベストプラクティスを積極的に導入するなど、ハイレベルなコンタクトセンターが多い日本では、UCに対する関心も高いと考えている。消費者、コンタクトセンター、企業のすべてがメリットを享受できるよう、コミュニケーション円滑化に貢献するとともに、実例を作りながらUCの利便性をアピールしていきたい」と話している。

(@IT 内野宏信)

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