IP KVMは管理のためだけじゃない
目指すはパワー・シンクライアント、アボセントが新製品投入へ
2008/04/01
アボセントは4月中に、シンクライアント市場の一部を奪う可能性を秘めたパワーデスクトップ向けの遠隔出入力製品「HMX」を、日本を含む全世界で発表する予定だ。同社はKVM(1組のキーボード、ディスプレイ、マウスで複数のコンピュータを遠隔的に利用するための信号切り替え)製品の大手企業。KVM製品はもともとアナログ入出力信号の切り替え器で、データセンターのラックに設置した複数のサーバを管理する目的などで広く利用されているが、最近では信号をIP経由で長距離にわたって運べる製品が登場し、管理以外に用途が広がりつつある。
HMXは、このIP経由のKVM製品だが、ハイビジョン画質の動画や音声をほとんど遅延なしに転送できるところが最大のウリ。これにより、金融トレーダーやCADデザイナ、アニメータなどのパワーユーザーの業務環境を改善する。これらのユーザーは複数の高性能なコンピュータを自分のデスク周りに置いて、使い分けているケースが多い。ユーザーは騒音や発熱に悩まされるほか、セキュリティ上の不安もある。そこでこうしたコンピュータをコンピュータ室に設置し、デスク上のディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカーから遠隔利用できるようにするのがHMXの目的だ。
この製品をすでに試験導入している企業の1社、ノバルティス製薬では、ドラッグ・モデリングでHMXを利用しているという。ドラッグ・モデリングでは社内の会議室のような場所で、複数のスタッフが共同で検討作業するニーズがある。IP経由でコンピュータの遠隔操作が可能なHMXは、コンピュータの利用場所を任意に変更できるため、高く評価されている、とアボセントのデスクトップ・ソリューションズ部門 マーケティング担当副社長 ジョン・カラン(John Curran)氏は話す。同様な理由で、空港や店舗などのマルチメディア・ディスプレイにも広く活用できるという。
HMXは「ソフトウェアが絡まないソリューションなので、コンピュータにエージェントのインストールが不要で、導入に時間が掛からない」(カラン氏)。OSやアプリケーションも選ばず、メンテナンス負担も低い。こうしたメリットを前面に押し出し、ターミナルサーバや仮想PCが実現するシンクライアントよりも高パフォーマンスで確実な利用環境を求める企業に向けて、展開していきたいという。
新たに販売するのは、送信側として単一のDVI-Iビデオ出力やUSB出入力をIP変換するアダプタ「HMIQDI」と、これを受けて最大1280×1024の画面出力とUSBポートやPS/2ポート、音声端子をデスクトップ側に提供するボックス「HMX1050」、そして2つのDVI-D出力をサポートする送信機の「HMIQDHDD」と受信機の「HMX2050」。価格はHMIQDI とHMX1050が約15万円で、HMIQDHDD とHMX2050が約20万円。
送信側と受信側の接続は、イーサネットケーブルにより1対1で直結するか、一般のイーサネットスイッチとイーサネットケーブルで多対多の通信を実現する。ネットワーク帯域の消費はターミナルサーバに基づくアボセントではHMX専用のネットワークインフラ構築を推奨している。なお、多対多の接続ではユーザー認証や接続先の管理が必要となるが、この機能を提供する管理アプライアンスは約45万円で提供の予定だ。
アボセントジャパンでは、2008年中にHMXを1000台のコンピュータに導入することを目標に掲げている。
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