ポータル、EC、ケータイ、カード、あらゆる行動履歴を活用
楽天がモバイル検索に参入する理由
2008/04/15
オンライン、オフラインでの消費者の購買行動に対する検索技術の重要性が増している。ECサイト「楽天市場」を運営する楽天は、バーチカル検索大手のファスト サーチ&トランスファの「Fast Enterprise Search」を使って2000万点の商品と1日当たり1200万ページビューというトラフィックを結びつけている。4月15日、都内で行われたイベント「FASTforward08」で講演を行った楽天・ファスト・モバイルサーチ 代表取締役社長 小林司氏は、楽天グループの検索への取り組みについて解説した。
大きな分類による商品カテゴリから徐々に絞り込んで目的の商品を探すというナビゲーションも、静的な分類によるディレクトリ方式ではなく、検索を使ってダイナミックに行っているという。ユーザーのニーズを推定したスコアリングや、評価やコメント数による豊富なソート機能などもファストの技術で実現しており、「こうした施策によって、サーチ結果から購買につながる例は約30%アップした」(小林氏)という。「楽天市場、ブックス、オークションなど扱っているアイテム数が多いため、1000ページビューを0.1秒で安定的に処理できるスケーラビリティが重要だ」(小林氏)とし、高度な検索技術の重要性を指摘する。
楽天は2007年1月から商品検索やジャンルごとの検索などのAPIを「楽天ウェブサービスセンター」で公開している。このAPIは、はてな、関心空間、Beer Do!!などで使われ利用者は2万5000人、1日に1000万ページビューとなっている。小林氏は「このAPI経由でで生み出される流通は全体の3%。法人・個人ともに裾野を広げ、これを10%に引き上げたい」と話す。
モバイル向けインターネットの3つの問題点
2007年8月に楽天とファスト サーチ&トランスファは合弁会社「楽天・ファスト・モバイルサーチ」を設立すると発表。2008年3月にはモバイル専用検索エンジンと検索サイトの提供を開始するなど、モバイル検索市場への進出を本格化している。
楽天グループがモバイル検索市場に進出する理由を、小林氏は3つの問題点から説明する。
1つは、現在モバイル向けインターネットで“ユーザーにとって”有益な情報が少ないこと。「キャリアの力が強く、どうしてもコンテンツプロバイダの情報が中心になりがち」(小林氏)だが、今後より多くの企業がモバイル向けで情報を提供を行うようになれば、検索の重要性が増すだろうという。「昨年のデータだが、企業でモバイル向けWebサイトを持っているのは、まだ35%。今後モバイルのユーザーが増えれば大手の意識も変わってくる。例えば飲料メーカーなら、『この地域で自社製のドリンクが飲めるところ』など、マーケティング的な意味でも検索が重要になってくる」(同)と、小林氏はケータイが持つ位置情報の活用を指摘する。
2つ目の問題点はPC向けとモバイル向けで検索アルゴリズムが違うこと。「PCでは被リンク数でランクを決めるのが一般的。しかし、リンクを張り合う習慣がないモバイル向けでは使えない。テキスト量もPCに比べて少ないので、検索アルゴリズムが違うはず。ここは企業秘密が多いが、特化したアルゴリズムを確立すれば新しいマーケットを開拓できるのではないか」(同)。
3つ目は検索のインターフェイスの問題で、「PCとモバイル向けでは検索のインターフェイスが違うはず」(同)。
クレジットカードの利用履歴まで含めたクラスタ分析
楽天グループが強いのは、楽天ブランドの傘下に多種のサービスをそろえていることだ。「楽天はユーザーの行動履歴を国内でいちばん持っている。検索履歴はもちろん、ポータルでの閲覧履歴、金融の取引コードも把握できる。クレジットカード会社の楽天KCの情報を合わせれば、各ユーザーのリアルの行動も把握できる。そうして集めた情報から、ユーザーのクラスタリングを行える」(同)という。
こうしたクラスタ分析と、“パーソナライズ”“リコメンド”の技術を組み合わせることで、「検索をしなくても、その人がほしいものを最初に出せるようになればベストだ」と、小林氏は中長期的な目標を語った。
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