セールスフォースがGoogle Appsをサポート込みで提供

「Salesforce+Google Apps」の統合、日本で初のデモ

2008/04/17

 セールスフォースは4月17日、すでに米国で発表済みの「Salesforce for Google Apps」の国内での提供開始を正式に発表した。Salesforce for Google Appsは、セールスフォースがSaaSで提供するCRMアプリケーション「Salesforce」と、メールやオフィススイートを含む「Google Apps」を統合してセールスフォースが再販するパッケージ。サポートなしの無償版と、サポート付きの有償版を用意する。有償版は2008年夏に提供開始予定で、価格は1ユーザー当たり1カ月1260円程度(10ドル相当)となる見込み。

sf01.jpg SalesforceとGoogle Appsとの統合の意味を説明する米セールスフォースドットコムのエグゼクティブ・バイス・プレジデント、ジョージ・フー氏

 都内で会見した米セールスフォース・ドットコムのエグゼクティブ・バイス・プレジデント、ジョージ・フー(George Hu)氏は、今回の発表が「時代の変革を促すもの」であるとし、「業界や顧客に対して、(SaaSや今回の統合によって)何が可能となり、いまIT業界がどこへ向かおうとしているのか再考を促すものだ」と、今回の両社の提携拡大が大きなステップであると説明する。

 SalesforceとGoogle Appsの統合は「きわめて相互補完的であり、合理的なもの」(フー氏)で、従来のサーバやローカルアプリケーションを使ったITシステムとは、まったく違った働き方を実現するという。記者発表会の場でセールスフォースは具体的なデモンストレーションを行った。

sf02.jpg セールスフォースのポータル画面。「Salesforce for Google Apps」でGoogle TalkやGmailが統合されている
sf03.jpg 例えばコンタクト情報のところにGmailアイコンがつく。従来はメールアドレスを含むURLだけだったが、直接Gmailを呼び出せるようになっている
sf04.jpg Gmailが起動して、通常通りメールを読み書きする
sf05.jpg 送信ボタンを押す代わりに「Send Gmail+Add to Salesforce」アイコンをクリックすると、Gmailでメールを送信するとともにSalesforce上にもメールがアーカイブされる。アイコンはJavaScriptで書かれたブックマーレットだ
sf06.jpg 確認メッセージが表示され、クリックするとメール送信とSalesforceへのアーカイブが実行される
sf07.jpg 送信したメールがSalesforce上にアーカイブされた状態。メールは顧客ごとの管理ページで確認でき、過去のやり取りを一覧できる。リード(見込み案件)とその後の商談進捗状況の把握などが容易だという
sf08.jpg Google Docsが統合されている。顧客企業へ企画書を提出する場合など、直接CRM上からプレゼンテーション文書を開ける
sf09.jpg Google Docsを使ったプレゼンテーション作成画面。既存のテンプレートを呼び出すこともできる。デモンストレーションでは、このプレゼンテーションをさらに同僚と共有して作業を進める
sf10.jpg Google Talkが統合されているため、細かな指示などメールを使うほどでもないコミュニケーションが簡単に行える。セールスフォースの宇陀栄次代表取締役社長は「提案書や見積書など内部統制上きちんと残すべきものと、そうでないちょっとしたやりとりは分けるべき。そういったものが全部1つのシステムの中でシームレスにつながっていく。チャットはコンシューマの世界で軽いものとして扱われてきたが、ビジネスの世界でも使っていいはずだ」とチャットツールの意義を説明する
sf11.jpg プレゼンテーション資料の一部を、文書をオンラインで共有した同僚が翻訳した。添付ファイルでオフィス文書を扱うのと異なり、バージョニングの問題など煩雑さがない
sf12.jpg Googleカレンダーとも連動しており、Salesforce上の予定を同期してGoogleカレンダー上で見ることができる。紫色の部分がSalesforceからインポートした予定

 すでにSalesforceとGoogle Appsの統合はかなりの程度で進んでいる。ただ、これらはJavaScriptによるブックマークレットや、APIによるマッシュアップといったWebサービスではありふれた手法で大げさなものではない。むしろ、こうした柔軟で“アジャイル”なアプローチによって、エンタープライズ向けITシステムがベンダの壁を越えて連携し、進化しているというダイナミズムにこそ注目すべきだろう。Google Appsが大きなアナウンスもなく日々少しずつ機能を追加・強化しているのと同様に、Salesforce for Google Appsは「まだまだ進化していくものとご理解いただきたい」(セールスフォース・ドットコム代表取締役社長兼米セールスフォースドットコム上級副社長 宇陀栄次氏)という。「どこか特定のベンダ製品を選んで、導入して、アップグレードして、というソフトウェアの時代は終わった」(フー氏)。セールスフォースのアプリケーションプラットフォーム「Force.com」向けに書かれたカスタムアプリケーションは現在6万4000種を数えるが、「Google Appsとの統合で、今後はもっと増えていくだろう」(フー氏)としている。

 旧来のSIビジネスと違うこうした新しいソフトウェアの提供形態で気になるのはサポートだ。宇陀氏はこう話す。「例えば日本でマッシュアップで帳票出力を行うようなものがある。そのような場合でもわれわれがプライム・コントラクターとなり、セールスフォースがサポートを提供する。Google Appsも、ただ統合するだけでなく、われわれがサポートを一元化して提供することに価値がある」。また、トラブル時の対応については「SIビジネスと比べると一極集中で品質管理しているのでトラブル対応が速い。グローバルで展開しているSaaSにアドバンテージがあると考えている」(宇陀氏)と話す。

 SaaSという新しいビジネスモデルで特に米国で快進撃を続けるセールスフォースだが、SaaSビジネスへ参入するマイクロソフトは脅威となるだろうか。この点についてフー氏は「マイクロソフトは確かに大きな会社だ。しかしインターネット時代に勝者になるのは、そのジャンルに注力する企業だ。デジタル音楽配信ではアップル、検索ではグーグルというように特化した企業が生き残る」と話し、同社のビジネスモデルに自信を見せた。

(@IT 西村賢)

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