デスクトップ仮想化でオフィスワーカーを狙う

「新しいPCを毎日使える」、シトリックスが宣言

2008/05/23

 サーバ仮想化は、米シトリックス・システムズが5月20〜23日に開催したプライベートカンファレンス「Citrix Synergy 2008」の大きなトピックにならなかった。しかし同社は、今後急速な伸びが期待されるデスクトップ仮想化市場に参入し、さらに補完製品の投入で、ターミナル・サービスを超えたデスクトップ環境構築・運用ソリューション提供ベンダへ移行していくことを強調した。

citrix01.jpg シトリックスの社長兼CEO マーク・テンプルトン氏

 シトリックスの社長兼CEOであるマーク・テンプルトン(Mark Templeton)氏は基調講演で、デジタル衛星放送の分野を開拓した米ディレクTVの成功モデルにならって、今後の事業を展開していくと話した。「ディレクTVはHBOやCNNのように番組をつくっているわけではない。しかしヘッドエンド(送信装置)、リピータ(中継器)、レシーバ(受信機)から成るシンプルなシステムで、コンテンツをデリバリ(配信)することによって付加価値を提供している」

 シトリックスでヘッドエンドの役割を果たすのは、ターミナル・サービスとアプリケーション・ストリーミングの機能を備えた「XenApp」と、今回出荷開始を発表したデスクトップ仮想化製品「XenDesktop」、そしてサーバを高速化する「NetScaler」だ。ターミナル・サービスは定型業務に携わるユーザー、アプリケーション・ストリーミングはモバイル・ユーザーのニーズを満たすことができる。さらにXenDesktopの投入で、同社がこれまでカバーできていなかった一般オフィスワーカーを対象とするデスクトップ環境提供のニーズに応えることを目指す。

citrix02.jpg XenDesktopは最大の潜在市場であるオフィスワーカーを狙う

 XenDesktopはヴイエムウェアの「Virtual Desktop Infrastructure」(VDI)と基本的に同じ仕組みだ。デスクトップOSをサーバ上で仮想マシンとして動かし、画面転送でユーザーがこれを操作できるようにする。しかしXenDesktopの上位エディションに同梱の「Citrix Provisioning Server」と「XenApp」を併用することで、特色を出している。

 Provisioning Serverを使うと、利用パターンによってユーザーをグループ分けし、各グループに1つのデスクトップOSイメージを用意して、グループ内の全ユーザーはこの単一のイメージからネットワーク・ブートで仮想マシンを立ち上げるという運用が可能だ。これなら管理者はユーザーごとに別個のイメージを維持する必要がなく、サーバ側のストレージを節約できる。パッチ当てなどの管理作業も減少する。

 シトリックスは各ユーザーの使うアプリケーションについても、XenAppからアプリケーション画面のみをサーバ上のXenDesktop仮想マシンに画面転送し、XenDesktopからユーザーへはXenDesktop仮想マシンの画面全体を転送する方式を勧めている。これだと仮想マシンごとにアプリケーションを動かすやり方に比べて、サーバの処理能力を大幅に節約できる。

 「リアルタイムにデスクトップを組み立てて配信することにより、新しいPCを数日でなく数分で提供できるようになる。ユーザーにとっては新しいPCを毎日使えるようなものだ」(テンプルトン氏)

 この運用方法の問題はパーソナライゼーションへの制限だ。シトリックスは5月22日に、ドイツのSepagoから「sepagoPROFILE」を買ったと発表、このツールでパーソナライゼーションの問題を解消しようとしている。

 デジタル衛星放送のリピータに当たるのは、WAN最適化製品の「WANScaler」と今回発表された「Branch Repeater」だ。Branch Repeaterはマイクロソフトと共同開発した、企業の支店用のWAN高速化アプライアンス。WANScalerの機能にWindowsネットワーキングの補助機能を付加し、さらにアプリケーション配信のパッケージをキャッシュすることで、支店ユーザーの利用環境を改善する。

 シトリックスはレシーバに当たるものとして、XenAppのパフォーマンス監視などを行うツール「App Receiver」と、画面転送プロトコルのICAクライアントに機能を追加した端末用のソフトウェア「Desktop Receiver」も発表した。

(@IT 三木泉)

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