グリーンIT推進協議会、2団体と協調して活動を加速

「温室効果ガスを減らさなければ、真の解決はあり得ない」

2008/05/29

 グリーンIT推進協議会は5月29日、グリーンIT国際シンポジウムを開催した。同協議会会長の町田勝彦氏に続いて、クライメート・セイバーズ・コンピューティング・イニシアチブ(CSCI)代表のローリー・ワイグル(Lorie Wigle)氏、グリーン・グリッド代表のジョン・タッシーロ(John Tuccillo)氏が挨拶。次いで、産業技術総合研究所の理事長、吉川弘之氏らがグリーンITに関する講演を行った。

 町田氏は、世界的な環境問題について「人類は加害者であり、被害者でもある。現実的で実効性ある解決に向けて、積極的に活動を推進するべき」と主張した。排出権取引についても触れ、「温室効果ガスの排出量を調整する取り組みもあるが、ものづくりの現場やオフィスにおいて、実際に温室効果ガスを削減せずして真の解決はありえない。その点でもグリーンITは重要な課題だ」と述べた。

greenit01.jpg グリーンIT推進協議会会長、町田勝彦氏(中央)とCSCI代表のローリー・ワイグル氏(左)、グリーン・グリッド代表のジョン・タッシーロ氏(右)

 一方、ワイグル氏は、CSCIの取り組みとして「コンピュータのエネルギー効率を向上させることと、コンピュータを使用していない時の消費電力を下げる電源管理機能の利用促進を図る」という2つの目標を紹介した。特に電源管理機能はユーザーの認知度が低く、その機能が付いていても使われていない例が多いという。ワイグル氏は、「2つの取り組みだけでも炭素の排出量を大幅に減らせる。今後はグリーンIT推進協議会と協調し、目標実現に向けて活動を展開していきたい」と話した。

 昨日、グリーンIT推進協議会とMOU(覚書)を締結したグリーン・グリッド代表、タッシーロ氏もグリーン・グリッドの目標を紹介。「省エネ化に向けたユーザー視点での有益なモデル・メトリクスの定義付け」「データセンターの効率改善に必要なスタンダード、効率性の測定方法、ベストプラクティスの策定および技術開発」「省エネルギー基準、省エネ実現のためのプロセス、測定方法、各種省エネ技術の適用を促進」──の3点を挙げ、「これらについて、参加企業にはオープンな議論、提案の場を提供し、世界規模でデータセンターの省エネ化に取り組んでいく」と強調した。また、グリーンIT推進協議会と協調して「省エネにおける日本の技術力を世界に向けて反映していきたい」と語った。

 続いて吉川氏が登壇し、「グリーンITの研究開発」について基調講演を行った。冒頭で、吉川氏は「持続性社会実現のためには平和とガバナンス、人間の安全保障をはじめ、さまざまな課題がある」と解説。グリーンITというテーマについても「単独で考えるのではなく、持続性社会を構成するほかのさまざまな要素と絡めて、広い視点で考慮しなければならない」と指摘した。

 また、世界中でエネルギー需要が高まっているが、エネルギー使用効率も確実に向上しつつあることを指摘。「効率向上は技術によって達成できるという方程式を忘れてはならない。日本の製造業も2度のオイルショックを乗り越え、生産性を向上させてきた。この背景にはITの発展がある。環境を維持しながら豊かさを目指す時代となったいま、グリーンITはますます重要なテーマといえる」と強調した。

greenit02.jpg 産業技術総合研究所の理事長、吉川弘之氏

 ただ、グリーンIT実現のためには、「半導体、ディスプレイ、インバータなど、あらゆる分野の技術開発と、新技術をいち早く実用化していける社会の仕組みが重要だ」という。この「仕組み」とは、技術Aより技術Bの方が3割コストが高ければ、Bの方が社会に役立つと分かっていてもAを選択する、といった社会の価値観だ。「競争的な仕組みだけでは、新技術を社会に生かしていけない。この点で、コストと生産性、機能性をはかりにかけるコスト・ベネフィットではなく、環境負荷と人が享受する福利を測るリスク・ウェルフェアの視点も重視すべきだ」

 最後に、吉川氏は「いまの社会には、エネルギー問題を体系的に研究する仕組みがない」ことを指し、「中立的な助言機関の創設」を提案した。自然科学者、社会科学者、科学技術者など、各分野の専門家が集う機関を設け、行政機関など「社会の行動者」に対して助言を行う機関だ。吉川氏は「社会での活動結果を収集・分析し、次の行動を提案し、改善に役立てていく。こうした機関があれば、持続的社会実現に向けて、着実な改善が望めるのではないか」と展望を語った。

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