SPSS、「SPSS Data Mining Day 2008」を開催

「今後はリコメンド競争になる」、CRMは予測分析がポイント

2008/06/17

 SPSSは6月17日、「SPSS Data Mining Day 2008」を開催した。同社社長 真島英一氏の挨拶に続いて、同志社大学特別客員教授で神戸大学名誉教授の田村正紀氏、SPSS セールスエンジニアリング部部長の鈴木貴志氏、i.JTB 代表取締役社長兼CIOの北上真一氏が基調講演を行った。

 鈴木氏は「予測分析による新たなCRMソリューション」と題して、データマイニングの原理となるPredictive Analytics(予測分析、以下PA)をROI向上に役立てる仕組みを解説した。冒頭で「PAとはデータを分析し、今後の予測を立て、アクションにつなげる、といった一連のPDCAサイクルを回していくためのもの」と解説。PAがBIと混同されがちな点についても触れ、「過去に起こったこと、いま起きていることを分析するのがQueryやOLAPなどBIのアプローチであり、PAは未来を予測する点が異なる。BIを受身的とするなら、PAは能動的といえる」と、PAの定義を明確化した。

写真 SPSS セールスエンジニアリング部部長の鈴木貴志氏

 PAをビジネスに活用し、実際に成果を挙げている企業のアンケート結果も報告。クロスセル/アップセル、キャンペーンマネジメント、新規獲得、動向予測、顧客維持・管理にPAの活用例が多いことを挙げ、「顧客データの分析、活用という点で、まさしくCRMの実現に直結する」と指摘した。

 PAの考え方についても、会員顧客維持の取り組みを例に取って具体的に解説した。多くの会員顧客の中でも「離反の可能性が高いのはどんな顧客層か」「その層にはアフターサービスなどのケアができているか」「できているなら、なぜ離反しそうなのか」といった具合に、離反する可能性と原因を追究していく。そのうえで、最終的に「製品・サービスの品質に不満がある」「価格が高すぎる」といった具体的な原因まで突き止め、品質向上、価格改定といった次のアクションにつなげるという。

 「改善のためのアクションを起こしたら、データを収集・分析し、再び次のアクションにつなげる。また、離反しそうな顧客をある程度維持できたら、今度は維持のための取り組みそのもののPDCAを回す。こうした取り組みによって、継続的に改善が狙える」

 PAの活用事例として、アメリカの投資運用会社、T.Rowe Price社のケースも紹介した。同社はコールセンターシステムのエスカレーションにPAを活用している。顧客から電話があると、過去の取引履歴と属性データの分析結果に基づいて、その顧客に最適なオペレータにコールを回す。また、ビジネスルールと顧客ごとのスコアリングデータの分析結果に基づき、各顧客に最適なサービスを勧めるコールスクリプトをオペレータに提示。オファーの結果、収益に貢献した場合、その会話内容を全オペレータに公開して次のアクションに役立てる。この結果、顧客のオファー受諾率が倍増したほか、PA導入1年目で2億ドルの追加収益を生み出したという。

 鈴木氏は、「いま、日本国内では顧客データを収集・蓄積している企業は多いが、統合的に管理、分析するためのプラットフォームを整備しているケースは少ない。顧客の新規獲得、成長、維持、不正検知、リスクマネジメントというCRMの5ポイントについても、各部門がそれぞれ個別に取り組んでいる例が多い。しかし、あらゆる顧客データを統合的に管理、分析できれば、CRMの5ポイントそれぞれに最適な分析結果が得られ、最適なアクションを起こせる。PAを業務に取り入れることで、確実に収益性拡大を狙える」と力説した。

写真 i.JTB 代表取締役社長兼CIOの北上真一氏

 一方、北上氏は「Webマーケティングにおけるデータマイニングの重要性と可能性」について講演。検索連動型広告やリスティング広告など、インターネット広告市場が年々伸びている状況を示し、「効果測定が以前に増して重要になっている」と指摘した。

 例えばリスティング広告では、旅行、JTBといったビッグワードの単価が跳ね上がっており、当初1クリック40円だったものが、いまや400円ほどになっているという。広告効果を上げるためには、「単に検索上位を狙うのではなく、精密な分析結果に基づいて、コストとパフォーマンスの関係を見極めたうえで施策を展開することが重要だ」

 Eコマースの収益を伸ばすうえでも、「サイトを訪れ実際に購入している」「サイトを訪れるが購入に至らない」「過去にサイト利用歴があるが2〜3年、購入履歴がない」いったように顧客層を明らかにしたうえで、「ターゲットごとの特性を分析し、それに基づいてPDCAサイクルを回すことが重要だ」と指摘した。

 また、データマイニングのポイントとして、「ログを中心としたサイト内回遊行動分析」「販売データ分析」「プロファイルを中心とした顧客分析」の3つを紹介。ただ、データは日々増加することも示し、「まずは、あらゆるデータを適切にクリーニングし、統合的に管理する体制が必要。そうすれば3つの分析によって、新たなマーケティングのアプローチが開発できる」と強調。インターネット上の企業競争が激化している中、「今後はデータ分析力に基づいた、レコメンド機能の競争になるだろう」とまとめた。

(@IT 内野宏信)

情報をお寄せください:

アイティメディアの提供サービス

キャリアアップ


- PR -
ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

米司法省がGoogleに「Chrome」売却要求 広告業界への影響は?
米司法省によるGoogleへのChrome売却要求は、リテールメディアネットワークに恩恵を与え...

トランプ氏勝利で追い風 ところでTwitter買収時のマスク氏の計画はどこへ?――2025年のSNS大予測(X編)
2024年の米大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ氏の勝利に終わった。トランプ氏を支...

AI導入の効果は効率化だけじゃない もう一つの大事な視点とは?
生成AIの導入で期待できる効果は効率化だけではありません。マーケティング革新を実現す...