Weekly Top 10
クラウドコンピューティングの現実
2008/07/08
@ITNewsInsightの先週のランキング第1位は米セールスフォース・ドットコムCEOの発言を伝える「開発者はパッケージソフトウェアとクラウドのどっちを選ぶか?」だった。マーク・ベニオフCEOの発言を聞いていると時代の変化を実感する。「Web 3.0」という言葉はさておき、「クラウドコンピューティング」は現実味を持ってきた。
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コンピュータの歴史はこれまで当然と思っていたことが突然覆ることの繰り返しだ。企業の情報システムでいえば、ITとはサーバで動く何かだった。多くの企業にとってはITを活用するとは業務アプリケーションを格納したサーバをサーバルームやデータセンターに保管することだった。そのサーバを情報システム部の担当者がお守りしていたのだ。
その常識が突然変わってしまった。サーバはネットワーク上のどこかにあり、企業はネットワークを経由して、そのどこかにある業務アプリケーションをサービスとして利用する。WebアプリケーションサーバやWebブラウザが登場したことによる必然なのかもしれないが、多くの企業にとってはやはり突然だった。
アプリケーションを保有するという考えも変わった。これまで企業は業務アプリケーションをインストールするサーバごとにアプリケーションのライセンスを購入し、さらに毎年、保守料金やサポート料金を払ってきた。アプリケーションがアップグレードするといわれれば、大きな出費を負担してアップグレードしてきた。それが、SaaSといわれる新しい世界では月々の支払いになってしまった。初期費用は安く済むし、アップグレードの費用は不要。もちろん、サーバ代金も要らない。
調査結果などによると、新しい情報技術に対して慎重といわれる日本企業も少しずつSaaSを利用しようとしているようだ。中堅中小企業からはじまり、大企業の部門。そして企業全体に広がっていくだろう。SaaS、クラウドコンピューティングはもう現実だ。
SaaSの流れでまず影響を受けるのはアプリケーションベンダだろう。SaaSに対応できないベンダは新規顧客を見つけにくくなることが考えられる。システム・インテグレータも変化を迫られる。これまでのように業務アプリケーションパッケージのカスタマイズで高い代金を取ることができなくなる。SaaSはカスタマイズができるのが従来のASPとの違いの1つともいわれるが、やはりパッケージソフトウェアと比べるとカスタマイズは減る。クラウド上でのアプリケーション開発などシステム・インテグレータは別の道を探る必要もありそうだ。
エンドユーザー側はカスタマイズや個別最適という考えを捨てることに加えて、情報システム部が変化を迫られる。守るべき情報システムが社内にないなら、部署全体が要らないのでは? という議論も生まれるだろう。これまでとは違う形で経営に貢献することが求められるはずだ。
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