IaaSとPaaSのリーダーシップ獲得へ

仮想化とクラウドが消え去らない理由、米ヴイエムウェアCEO

2009/09/02

 米ヴイエムウェアのカンファレンス「VMworld 2009」が米国時間9月1日、米国カリフォルニア州サンフランシスコで開幕した。社長兼CEOのポール・マリッツ(Paul Maritz)氏は基調講演で、仮想化環境管理ツールの進化、クラウドサービス事業者への支援強化、SpringSourceの買収などについて語り、ヴイエムウェアのビジネスが狭義の仮想化にとどまるものでないことを強調した。

 「目標は(企業ITの)複雑さの軽減だ。われわれがやることのすべては、ユーザー企業を身軽にすることを目的としている。仮想化は、おそらくこれを実現できる唯一の技術だ。仮想化はアプリケーションをその下のインフラから切り離し、そこにクラウド的な力を注入することができる。これにより、革命的(revolutionary)な改善への、漸進的(evolutionary)な道筋を提供できる」。

vmware01.jpg 米ヴイエムウェアの社長兼CEO、ポール・マリッツ氏

 サーバ仮想化市場については、ハイパーバイザは陳腐化し、結局のところこの市場は仮想化環境の構築や運用の作業を省力化するお決まりの管理ツール間の競争に帰着してしまうのではないかという見方もよく聞かれる。しかしマリッツ氏は、企業ITを劇的に変化させられる仕掛けを今後ますます提供していくと自信を示した。

 ハイパーバイザは陳腐化したのか。ヴイエムウェアは4月に発表した同社の仮想化ソフトウェア新バージョン、「VMware vSphere 4」のハイパーバイザ「VMware ESX 4.0」で、サーバ統合率を高めるとともに、サーバ・ハードウェアとの連携で企業データセンターの省電力化を実現した。I/Oスループットをはじめとするパフォーマンスの強化で、企業におけるあらゆるアプリケーションを稼働できるようになった。これらが、非効率で硬直化した分散的なIT環境から、効率的で柔軟な統合環境への移行をさらに促進できると話した。

vmware02.jpg 仮想化の取り組みは、サーバ統合、社内/外部のクラウド化、自動化の3段階で進むとマリッツ氏は話した

 仮想化環境管理ツールも、単なる構築・運用管理の省力化にとどまるものではない。例えばヴイエムウェアが7月に提供を開始した「VMware vCenter Chargeback 1.0」。仮想化リソース利用量を事業部門別に集計し、これに応じたコスト配賦が行えるツールだ。企業内ITをサービスとして定義し直すことを支援する。また、Chargebackと同時に発表した「VMware vCenter AppSpeed」は利用者の観点から仮想化環境を管理できる。ネットワークからハイパーバイザ、アプリケーションの各プロセスまでを監視し、パフォーマンス劣化が発生した場合に原因を特定できることで、サービスレベルの維持に貢献する。

 ヴイエムウェアは、企業における現在あるいは将来の仮想化リソース利用ニーズに基づいて、最適なハードウェアリソースをアドバイスするキャパシティ管理支援ツール「VMware vCenter CapacityIQ」を2009年中に投入する。さらに企業内でAmazon EC2のように、エンドユーザーが自分で稼働したいアプリケーションを選択することによって、即座に仮想化されたアプリケーションを利用できる環境を構築するツールも提供を予定している。

 クラウド関連では、VMware vSphereを基盤としてIaaSなどのサービスを提供する事業者がすでに1000を超えたことをマリッツ氏は報告(ヴイエムウェアのクラウド関連戦略については別記事として掲載する)。Amazon EC2的なセルフサービス/クレジットカード課金型IaaSサービスをヴイエムウェア上で構築、提供する事業者を対象としたロゴプログラム、「vCloud Express」を発表した。同時に、利用者や事業者が仮想化環境上でアプリケーション(仮想マシン)を導入したり、運用したりするための「vCloud API」を発表した。vCloud APIの仕様はDistributed Management Task Force(DMTF)に提出したという。仮想マシンを企業内からサービス事業者に移動するだけでなく、サービス事業者から戻すことや、データセンター間で移動することも含めて、相互運用性の確保された基盤を提供。これによりユーザー企業にとっての自由度や柔軟性を高めていくという。

 8月に発表したSpringSourceの買収についてマリッツ氏は、「仮想化とライトウェイトなアプリケーション開発フレームワークを足し合わせることで、アプリケーションのレベルでの大幅なシンプル化を実現できる」と説明した(SpringSource買収については別記事として掲載する)。SpringSourceはSpring Frameworkの一方でSpringSource tc Server、dm Serverといったアプリケーションサーバを持っている。マリッツ氏はこれらを活用することで、IaaSのみならずPaaSの世界でのリーダーシップを確保できると語った。

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(@IT 三木泉)

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