エンジニアにはなぜコミュニケーションスキルが必要なのか
話上手なエンジニアはランチを1人で食べない
2009/10/06
「エンジニアにはコミュニケーション能力が必要」といわれ続けて久しい。しかし、そもそもなぜエンジニアにコミュニケーション能力が必要なのだろうか。エンジニアに必要とされるコミュニケーション能力とは、具体的にどのようなものを指すのだろうか。常駐先でコミュニケーション能力を高く買われるエンジニアである、ヘッドウォータースの瀬戸瞳氏に話を聞いた。
瀬戸氏は、主にクライアント企業に赴いて仕事をするエンジニアだ。インドやベトナムでのオフショア開発で海外エンジニアと接した経験もある。仕事をする相手の多くは「社内以外の人間」だ。
海外エンジニアや常駐経験を踏まえて、瀬戸氏はエンジニアが置かれている現状の問題を2点指摘した。まず、海外エンジニアの存在だ。「同じ『エンジニア経験2年』でも、日本人エンジニアに比べて、海外エンジニアのスキルレベルは高いです。開発だけなら、日本人エンジニアでなくてもまったく問題はありません」と、瀬戸氏。海外エンジニアと差別化を図るためには、日本語でのコミュニケーションは武器になる。さらに、不況による受注案件の減少という状況もある。「これからは、クライアントから受注をもらう『受け身型エンジニア』ではなく、『提案型エンジニア』である必要があります」と瀬戸氏は主張した。
「提案型エンジニア」とはどのようなものだろうか。瀬戸氏が勤めるヘッドウォータースでは、営業担当者がほとんどいない。仕事を取ってくるのはエンジニアである。エンジニアは、それぞれが企業に赴いてシステムを提案し、仕事を受注する。各エンジニアが受注した仕事は、社内で参加メンバーを募って作業を進めるという。
40分間無言のランチに堪える
とはいえ、エンジニアがいきなり提案や営業をするのはハードルが高い。「コミュニケーションができるエンジニア」になるためには、具体的にどのようなことから始めれば良いのだろうか。ポイントとして、瀬戸氏は「失敗してもめげずに、相手に食い込んでいくこと」を挙げた。
常駐エンジニアは、クライアント企業においては外部の人間だ。しかし、瀬戸氏はランチを1人で食べることがほとんどないという。チームメンバーから誘われるからであり、また誘われないなら自分から誘いに行くからだ。
「常駐先では、チームのエンジニアに声をかけて一緒に食事に行くようにしました。会話を好まないエンジニアが多い会社に常駐したときには、ランチの40分間、ほとんど会話がなかったこともありました。普通だったら、その人とはもうランチに行かないでしょう。でもわたしは続けました」。会話がはずまなくても、構わずに話の種を探し出して、話しかけ続けるのだという。「めげないことです」と瀬戸氏は強調した。
とある外資系コンサルティング企業では、大阪出身の女性コンサルタントたちから「わたしたちはコンサルタントだけれど、あなたはエンジニアでしょう」と、ろくに話もできないような態度をとられたことがあるという。「彼女たちと話すために、県民ネタや大阪のネタをテレビなどで仕入れ、出身地の話を振るようにしました」と瀬戸氏。結果的に女性コンサルタントと打ち解けることができて、最終的には「ぜひうちの会社で働いてほしい」といわれるようになったという。
30歳になっても「話をしないエンジニア」では生き残れない
「神経をすり減らしてでも、相手に食い込もうとします」と瀬戸氏。なぜそうするのかと聞くと、「自分の存在感を示すため」という答えが返ってきた。
「外注エンジニアは、クライアント企業の中で1人だけ外部の人間です。どうしても肩身が狭くなる。すると、『どうやって自分の立場を確保するか』『どうやって外注エンジニアや常駐エンジニアの立場を改善するか』を考えるんですね。人に好かれるための努力、といってもいいかもしれません」。瀬戸氏が目指すのは「一緒に飲んでいても食べていても楽しい人」だそうだ。
また、仕事の効率化を図る狙いもある。
「コミュニケーションをしない人は、徹底的に会話を避けますが、それでは仕事が進みません。25歳ぐらいまでなら、『話をしないプログラマ』でも、仕事はあるでしょう。しかし、30歳以降も同様にコミュニケーションを避けていたらどうなるでしょうか。おそらく仕事内容はかなり限定されてくると思います。プロジェクトマネージャなどのキャリアパスを考えるなら、やはりコミュニケーション能力は不可欠です」と瀬戸氏は語った。
「コミュニケーション能力」とは、会話のうまさというよりは、まず「コミュニケーションする機会を諦めない力」といえそうだ。まずは、ランチの時間に誰かに声をかけてはいかがだろうか。
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