ストレージ以外の何に投資するか

サーバ、データベース…… EMCの戦略は?

2011/05/17

 世界最大のストレージベンダとして知られてきたEMCは、何をどこまでやろうとしているのか。5月第2週に同社が米国ラスベガスで開催したEMC Worldの、基調講演やプレス向けセッションにおける同社幹部の発言から、その文脈を探ってみた。

2つの大きな市場機会

 「規模が大きくなったIT企業で、隣接市場に参入していないところはあるか」。サーバやデータベースなど、EMCのこれまでの事業分野とはかけ離れた分野に参入しつつあるように見えることをプレスセッションで問われた同社会長兼社長兼CEOのジョー・トゥッチ(Joe Tucci)氏は逆にこう聞き返した。では、EMCは何を参入すべき隣接市場と捉えているのか。

emc01.jpg EMC会長兼社長兼CEOのジョー・トゥッチ氏

 トゥッチ氏は基調講演で、(ヴイエムウェアを含めた)「顧客の、クラウド・コンピューティングおよびIT変革への道程をリードすること」をEMCのミッションとして掲げた。そして、企業では、基幹アプリケーションの仮想化も、もはや主流になろうとしている、また、ビッグデータを生かす者が勝ち残っていける、そして社外クラウドと社内クラウドを臨機応変に活用するハイブリッド・クラウドこそ、今後の事実上の企業ITのモデルになると説明した。

 「クラウドとビッグデータの交差するところに、膨大な機会がある」。トゥッチ氏は、これほど多くの変化が一度に起きるのを、いままで見たことがないと話し、クラウドとビッグデータは企業ITに「disruptive(破壊的、非連続的)」な変化をもたらすとして、EMCはこの分野に対して集中的な投資を続けていると続けた。すなわち、クラウドとビッグデータという2つの大きな市場機会をテーマに、隣接市場を開拓していくということでもある。

ストレージ製品の展開戦略

 具体的には、まずストレージ製品で、構造化データ/非構造化データ、そしてビッグデータと、すべてのデータタイプの保存ニーズをカバーする。「ビッグ」な非構造化データを中心としたストレージ・ニーズに対応するため、EMCが昨年7月に買収したのがアイシロン・システムズだ。

 データを格納する箱だけでなく、その上のレイヤとしてデータを管理する技術も進化させている。複数拠点のストレージを分散キャッシュで連携させる製品「EMC VPLEX」は、これまで単一データセンター内で複数のストレージ群間の連携を実現する「VPLEX Local」と、最大100km離れた2拠点間のファイバチャネルの同期接続により、相互連携が行える「VPLEX Metro」が提供されてきた。同社は今回、非同期接続によって、遅延が50ミリ秒以内であれば数千km離れた地点間を連携できる「VPLEX Geo」を発表。距離を意識しないデータ活用手段の提供という点で、また一歩前進した。さらに今回、EMCはクラウドサービスなどにデータを自動的にアーカイブできる新製品「EMC Cloud Tiering Appliance」を発表した。

Greenplum買収の理由

 EMCが昨年のEMC World後に行った、もう1つの大型買収はGreenplumだ。これは「データベース」と呼ばれるが、実際にはPostgresSQLを超並列に用い、外部データベースのデータも取り込んで、データウェアハウス機能を提供できる製品。構造化データを対象としてきた同製品に、今回発表されたエンタープライズ版Hadoopが加わったことで、非構造化データにも対応できるようになった。つまり、構造化データ/非構造化データにまたがって、データ分析インフラを提供できるようになった。ソーシャルメディアへの投稿をはじめとする「ビッグデータ」を分析してビジネスに生かすことの支援は、IT部門にとっての重要な役割になると、ガートナーなどの調査会社も訴えている。IT部門の業務への貢献に欠かせないこの機能を実現するための、情報活用手段を提供するのがEMCの狙いだ。言い換えれば、BIのための社内PaaS的な役割を、IT部門が事業部門に対して提供できるようにするものだ。

emc02.jpg EMC製品のポジショニング

 その意味で、Greenplumはいわゆる業務アプリケーションではない。データベースとしても、DB2やSQLServerと競合する存在ではない。クラウド/ビッグデータを踏まえた広義の「情報管理」あるいは「情報インフラ」の枠内で、EMCは隣接市場の開拓を進めていると表現できる。

 一方、クラウドでは、子会社のヴイエムウェアが中心的な役割を担い、社内クラウドと社外クラウドをつないで、ハイブリッド・クラウドを実現するための基盤を提供する。

 EMCとしての役割は、まずストレージ製品のVMware vSphereとの親和性をさらに高めていくこと。第2に、EMCがシスコ、ヴイエムウェアと共同で展開する、サーバ/ストレージ/サーバ仮想化のパッケージである「Vblock」で、企業におけるプライベートクラウド構築の所要期間を短縮化する手段の1つを提供することだ。EMCはそのVblockのための「EMC Ionix Unified Infrastructure Manager (UIM)」で新バージョン2.1を発表。VMware vDirectorなどとの連携強化で、仮想データセンターの作成や管理をシンプルなステップで実現できる。情報インフラストラクチャ製品部門プレジデント兼COOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏は基調講演で、vDirectorを採用したIaaSを展開するCSCのサービスとインターフェイス的に統合し、必要に応じて社内クラウドから社外のクラウドサービスへ、一部の仮想マシンを移動できることをデモした。この機能は、実際に利用可能になっているとCSCでは話している。

サーバ市場への参入はあるか

 ストレージとクラウド/仮想化ソフトウェアを有するEMCが、サーバについても自社製品を販売することに、あまり高いハードルはないのではないかと考える人たちはいる。特に大手ITベンダが次々に垂直統合/自給自足体制を強化していることを考えると、こうした推測はあながち的外れではないのではないかとも思えてくる。しかしEMCは汎用的なサーバを販売するつもりはないとしている。これは、付加価値の低いビジネスはしたくないということの裏返しでもあるだろう。同社のストレージ機器は、ほとんど皆サーバ機と同じようなものだ。GreenplumやHadoopのアプライアンスもx86サーバを組み込んでいる。その意味でEMCはすでに実質上、多数の「サーバ機」を売っている。しかし、ストレージのデータ管理をはじめとする各種機能や、Greenplum/Hadoopのソフトウェアによる目的に特化した使い勝手があってこそ、付加価値およびマージンを実現できる。EMCはサーバ機を単体で売ることはないだろう。

 EMCは、ITシステム管理で多数の製品を保有するに至っている。そのうちの一部はヴイエムウェアに移譲したが、気になるのは管理ツールで、どこまでヴイエムウェアとのオーバーラップをアリと考えているのかということだ。この点をゲルシンガー氏に聞くと、クラウド管理の中核はヴイエムウェアにまかせ、EMCではハードウェアや他社の管理ツールとのインターフェイスをとる役割を担っていく、だからこそ一部の管理ツールを昨年、ヴイエムウェアに移譲したと答えた。だが、サーバ仮想化/クラウド/ITシステム管理ツールは市場の力学に応じて、求められる見せ方やパッケージングが大きく変化し得る。この分野で今後どのような動きをEMCが見せるのか、注目される。

(@IT 三木泉)

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