技術力と体力、ひらめきと運が求められるDEFCON CTF
「組織力」でハッキングコンテストに挑む日本人チーム
2011/08/05
毎年夏になると、世界最大級のセキュリティカンファレンス「BlackHat Briefing」と「DEFCON」が、米ラスベガスにて開催される。これらカンファレンスは、脆弱性や最新の攻撃動向に関する研究成果などを発表する場である一方で、特にDEFCONは技術者の「お祭り」という側面も持つ。
その「お祭り感」を最もよく体現し、人気も高いイベントが、ハッキングに関する知識や技術を競うDEFCONの「CTF(Capture The Flag)」だ。
今年のDEFCONのCTFは、現地時間8月5日の9時から行われる予定だ。参戦できるのは、300チームが参加した予選を勝ち抜いた12チームだ。今回はここに、日本人チーム「sutegoma2」(すてごま2)が参加する。個人としての日本人参加はこれまでもあったが、日本人チームとしての参戦はこれが初めてのこと。本戦を前にsutegoma2メンバーは「全力を尽くしたい」という。
教科書にない答えを自分の頭で見つける楽しみ
CTFには主に2つの方式がある。1つはクイズ式のもので、ジャンルごとに用意された複数の問題を解いていき、チームごとに総得点を競う。ジャンルは「暗号」「パケット解析」「バイナリ解析」「フォレンジック」などに分かれており、難易度に応じて得点が付けられている。DEFCON CTF予選はこの形式だ(関連記事)。
もう1つは「旗取りゲーム」の名前が示すとおり、自分のサーバを守りながら、相手のサーバを攻略して得点を取り合うものだ。その場でパッチを作成するなどして自分のサーバを守る一方で、相手のサーバの脆弱性を見つけ出し、コードを作成して攻撃する。ラスベガスで行われる本選は、こちらの方式となる(関連記事)。
CTFではセキュリティ全般に関する知識と技術力が問われるのはもちろん、「ひらめき」「発想力」も求められる。また競技は2〜3日に渡る長丁場となるため、「体力」、特に終盤の「追い込み力」も重要だ。年によって問題の傾向が変わるため「運」や「流れ」をつかめるかどうかも勝負を左右するという。それだけに、回答できたときの面白さはひとしおだ。また、オンライン/オフラインでさまざまな人に出会えることも楽しみの1つという。
さらに、セキュリティ技術者としては「いろんな新しいネタ、新しい技術を使った問題に出会えること」(sutegoma2のメンバーであるtessyこと寺島崇幸氏)も醍醐味だ。
例えば2007年の予選では、当時はまだ珍しかった、ファイルの中に含まれている位置情報を見つけ出すという問題が出題された。いまでこそGPSによる位置情報の活用は当たり前だが、5年前にそれを先取りしていたわけだ。また今年の問題の中には、Chromeでも使われているGoogleの独自プロトコル「SPDY」と17年も前の脆弱性を組み合わせたユニークな出題もあったという。
「教科書には載っていない答えを、自分の頭で考え、見つけ出すことが最大の楽しみ」(sutegoma2のメンバー、yoggyことすけだい よしゆき氏)。
なでしこに続け!
sutgoma2は、6月4日から6日にかけて行われたCTF予選で見事2位に入り、本戦出場を決めた。前身の「チームチドリ」時代から数えて6回目にしての快挙である。
sutegoma2は、BlackHat Japanの打ち上げから発展したイベント「AVTOKYO」の参加者有志が、CTF出場を目指して結成したチームだ。コアメンバーは十数名で、セキュリティ関連企業の技術者や学生などで構成されている。その時々に応じて、サポートメンバーが加わることもある。
「DEFCON CTF本戦出場」を目標に掲げ、勉強会や過去問の研究にいそしむ一方で、韓国で行われる「CODEGATE」や、マレーシアの「HACK IN THE BOX(HITB)」などのCTFに参加し、経験を積んできた。DEFCON直前に台湾で開催された「HITCON」にも参戦し、メンバー2名が入賞している。
最近になって各地のCTFで好成績を収めているが、若手技術者が相次いで参加したことが、チーム力を底上げしていると寺島氏は語る。中には、バイナリファイルをそのまま見るのではなく、1バイトごとに1ドットずつ色を付けて「見える化」し、ファイルの種類を判別する「目grep」なる異能を発揮するメンバーもいる。
とはいえ、参戦する他のチームも強力だ。政策の一環としてセキュリティ技術者の育成に取り組んでいる国もあり、層は厚いが、「sutegoma2には、力を合わせたときの強さがある。日本人の組織力、チーム力でカバーしたい」と寺島氏は述べ、上を目指したいと述べた。なでしこジャパンに続く日本人チームの健闘に期待したい。
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