クラウドの可能性は“攻め”の視点で追求すべき
日立、「Hitachi Open Middleware World Cloud Day」を開催
2011/11/21
日立製作所は11月17日、クラウドの運用、設計、構築をテーマにしたプライベートセミナー、「Hitachi Open Middleware World Cloud Day」を開催した。その基調講演に、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が登壇。ソーシャルネットワークとクラウドコンピューティングの進展に伴う企業、社会のあり方の変化と、今後のITの方向性について語ったほか、主催者講演では日立製作所 ソフトウェア事業部 先端情報システム研究開発本部 本部長の三木良雄氏が「クラウド時代の社会イノベーションに貢献するオープンミドルウェア」と題し、同社のオープンミドルウェア製品の取り組みを紹介した。
コスト削減だけに目を奪われず、クラウドの可能性を探るべき
セミナーでは「クラウドの運用」「クラウドの設計/構築」をメインテーマに、多数のセッションを実施。デモンストレーションコーナーも用意され、「クラウドを支えるシステム基盤」の実現に寄与する、同社ソリューションやミドルウェア製品があらゆる角度から具体的に紹介された。
そうした中、佐々木氏は、「ソーシャルとクラウド化がもたらす日本社会の変化と今後のあり方」と題して講演。ソーシャルネットワークとクラウドコンピューティングの進展によって、「今後はビジネスの“プラットフォームモデル”が、従来の垂直統合型から、水平統合型へ変化していく」と指摘した。
「テレビ業界のビジネスを例に挙げると、今までは各テレビ局が番組を提供し、そこにCMを付与したり視聴料を設定したりするワンパッケージのビジネスだった。これに対して、Connected TVやSmart TVなど新しい概念のテレビでは、インターネット環境との接続によって、ユーザーの年齢・性別・趣味などに合わせて最適なCMを配信したり、スマートフォンのように、さまざまなアプリを有料で提供するなど、“レイヤー別”の新たなビジネスが生まれてくる」
また、レイヤー化されたプラットフォームモデルでは、ソーシャルメディアの重要性がさらに向上するという。
「すでに米国では、今までテレビを観ていなかった人が、TwitterやFacebookなどソーシャルメディアの情報を見て、テレビ番組を視聴するという動きも出始めている。また、現在放送中の番組について、テレビ局別につぶやくことができるアプリケーションも登場している。つまり、その参加人数を見れば、従来の視聴率とは別の視点から、番組の視聴傾向がリアルタイムに分かってしまうということだ。商品販売についても、ソーシャルメディアが提供している決済機能を利用すれば、テレビから簡単にショッピング可能となる。このような“プラットフォームのレイヤー化”が進むと、各テレビ局が個別に展開してきたワンパッケージ型のビジネスモデルが崩れる可能性もある」
こうした動きはテレビ業界だけではなく、複数の分野でも急速に進んでいるという。特にIT業界では、“プライベートからパブリックへ”“ローカルからグローバルへ”という流れが、さらに加速していくと佐々木氏は訴える。
「国内IT企業にとって、プラットフォームがレイヤー化されることによる本当の怖さは、プラットフォーム上でのビジネスをグローバル企業に奪われてしまうことだ。例えば、TwitterやFacebook、Google+など、今注目を集めているサービスは、全てグローバル企業によるもの。今後、国内IT企業は、自社のプロダクトを『クラウド化してグローバルプラットフォームに展開する』か、『ノマドなモジュールにしてスモールビジネスに転換する』かの選択を迫られるのではないか」
佐々木氏はこのように述べた上で、「クラウド化は単にコストを削減できるというだけではなく、日本の社会、産業、ビジネスそのものを変革させる可能性がある。(クラウドの活用においては)そうした発想を持ってほしい」と提言。自社はどのようにクラウドを収益向上に役立てるのか――各社が攻めの視点で積極的に可能性を模索することが日本の発展につながることを示唆した。
運用管理者の負担を下げながら、ビジネスを合理的に加速
一方、主催者講演に登壇した日立製作所の三木良雄氏は、「クラウド時代の社会イノベーションに貢献するオープンミドルウェア」と題し、まず製品開発の背景となっている“同社の考えるクラウド時代の社会イノベーション”から話を切り出した。
「クラウド時代には、多種多様なサービスがいつでもどこからでも利用可能となり、その高度なユーザー体験が日常化されていく。また、人やモノの行動や振る舞いを示すデータが大量に発生する。このデータを知識化して、社会にフィードバックしていく取り組みも重要になる」
これに対して同社では、メインフレーム時代から顧客とともに構築してきたミッションクリティカル技術を『Harmonious Cloud』として体系的に製品化。クラウドに対応した信頼性の高いミドルウェアを提供することで、「社会イノベーションの加速に寄与していく」という。
次に三木氏は、クラウドサービスを支える同社のミドルウェア製品群を「リソースの迅速な調達」「業務サービスの簡単構築」「サービスの安定稼働」と3つの要件に整理して解説。
具体的には、まず「リソースの迅速な調達」を支える製品として、『JP1/IT Resource Management』を紹介。運用ライフサイクル全般にわたる各種作業を1つの製品で管理できるため、運用管理者の負担を大幅に軽減するほか、クラウドサービスに対するITリソース割り当てを適正化できる点が特長の1つだという。
「業務サービスの簡単構築」を実現する製品としては“PaaS環境管理基盤”である『Cosminexus』を紹介。初期基盤の設計・構築、再構築、構成変更作業を容易にし、システム構築・ビジネス展開のスピードを速めるという。
そして3つ目、「サービスの安定稼働」においては、『JP1/IT Service Level Management』を紹介。この製品は、サービスの利用者による実際のアクセス状況を収集・分析し、サービスレベルの評価指標(SLO)を監視する。また、データの傾向から、いつもと違う予兆をリアルタイムに検知し、問題の発生を未然に防止できるという。
大量データ活用を支えるミドルウェア製品もラインナップ
一方、「大量データの活用」を支える同社ミドルウェア製品群についても、データの「リアルタイム監視」「蓄積・検索」「集計・分析」というの3つの要件に分けて紹介。
リアルタイム監視については、ストリームデータ処理技術を採用した「uCosminexus Stream Data Platform」、蓄積・検索については「超高速DBMS(2012年度に事業化予定)」および「時系列データストア技術」、「集計・分析」については、グリッドバッチを活用した「uCosminexus Grid Processing Server」を展開しているという。
最後に三木氏は、「今後も“協創”のパートナーとして、顧客とともに次の社会イノベーションに貢献していく」と力説。“クラウド時代”が本格化していく中、今後も従来同様にユーザー企業とのパートナーシップを重視し、新たな社会イノベーション実現に向けたミドルウェア開発に注力していく姿勢を示した。
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