TEDxTokyo 2012カンファレンス

クリエイティビティを高める5つの方法

2012/07/02

 6月30日、TEDxTokyo 2012(以下、TEDx)が開催された。TEDx(テデックス)は、テクノロジ(Technology)・エンタテイメント(Entertainment)・デザイン(Design)の3つを融合した招待制のカンファレンス・イベント。第4回目となる今回は35組の個性豊かなスピーカーたちがアイデアを発表した。その中で、デザインコンサルティング会社、IDEOの役員であり、数々の優れた実績から“イノベーションの伝道者”とも呼ばれる、トム・ケリー氏は「クリエイティビティを高めるための5つの方法」について述べた。

トム・ケリー氏 トム・ケリー氏(写真提供:TEDxTokyo)

 まず、ケリー氏が指摘したのは「クリエイティビティを求めるのであれば、今すぐに普通の行動をやめなければならない」ということだ。

 「通常の成人の頭は、クリエイティビティがオンになっていない。ゆえに、あなたはまずクリエイティビティを求めるのか、求めないのかを決めなければならない。もし、クリエイティビティを求めないなら、普通の行動をしていれば良い。だが、求めるならば、今すぐ普通の行動をやめなければならない。クリエイティビティの高い人には、普通の行動をしていないという共通点がある」

 2つ目は、脳に流れてくるアイデアの捕獲率について。「例えば、脳に流れてくるアイデアのうち、10%しか残らないとする。しかし、スマートフォンやデジタルカメラなどのキャプチャーデバイスを使うことで、90%に引き上げられるかもしれない。すると、ソリューションのネタとなるアイデアが9倍に増えることになる。このように、捕獲率を上げることを意識すると良い。

 3つ目の方法は、「難しい問題に直面したときには、心理的・精神的な距離を置く」こと。例えば、ある問題が起こったとき、自分の国のことではなく、遠い国の問題の方がクリエイティブな解決策を導き出しやすい。それと同じように、例えば「もし6歳の子供だったらどう答えるか」といったように、今の自分と心理的・精神的な距離を置いて考えるのである。

 4つ目、「自己批判のスイッチを切ること」も興味深い見解だ。例えば、人前で何らかの発表をしたとき、発表後に「どうだった?」と人から聞かれても、うまくできたか否かを答えられないケースがある。人前で話すことは、それ自体、人に一定のプレッシャーを与える。あとで振り返った時に、客観的に発表の出来具合を答えられないのは、プレッシャーに押しつぶされないよう、人は無意識に、そうした状況では自己批判のスイッチを切っているためなのではないか、とケリー氏は推測しているという。そして、これがクリエイティビティを活性化させる上で重要なことであり、「あえて意識的にスイッチを切ることが大切だ」と指摘する。実際、ミュージシャンに、暗譜演奏と即興演奏をしてもらい、その心理状態を調べたところ、暗譜演奏に比べて即興演奏では自己批判が消えており、明らかにクリエイティビティが活性化していたという。

 そして最後は、朝起きたときにアイデアをメモすること。「人間の脳(前頭皮質)は、寝ているときに沈静化する。そのため、私たちは自由でクリエイティブな夢を見る。そして、その前頭皮質は寝起きが悪い。だから、目覚まし時計が鳴ったときにすぐに飛び起きてはいけない。枕元には常にメモ帳を置いておき、ぼーっとした状態でアイデアを考え、メモに書き留めておく」。実は、ケリー氏は今回のプレゼンテーションの内容も、こうしたときに思い付いたのだという。

 「創造性こそが経済成長の鍵を握る」を信条に、数々のコンサルティング実績を打ち立て、20人ほどの小規模な会社だったIDEOを500人規模にまで発展させた立役者、トム・ケリー氏。その本人による「クリエイティビティを高めるコツ」であるだけに、シンプルでありながら、1つ1つが深い示唆に富んでいる。これら“5つの方法”は、プログラマや開発者、運用管理担当者など、全ての立場の人に数多くのヒントを与えてくれるのではないだろうか。

 ケリー氏をはじめ、クリエイティビティあふれる登壇者らの言葉に、TEDxの会場は終始、熱気とエネルギー、そして歓声に包まれていた。

神社で行ったディナーレセプション「TEDxTokyo祭り」の様子 神社で行ったディナーレセプション「TEDxTokyo祭り」の様子(写真提供:TEDxTokyo)



▼他のプレゼンテーションは、以下から見ることができる。
TEDxTokyo 2012プレゼンテーション

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(@IT 太田智美)

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