[Analysis]

振り出しに戻ったマイクロソフト裁判

2001/07/03

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 米マイクロソフトの独占禁止法(独禁法)違反訴訟で、6月28日に米連邦高裁が下した差し戻し判決により、とりあえずマイクロソフトは分割を免れた。この判決を受けて記者会見を開いた同社は勝利宣言を行い、会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクトのビル・ゲイツ(Bill Gates)氏は「両サイドが落ち着いて話し合いができるときが来た」と和解に前向きな発言をした。同社と連邦司法省の戦いは振り出しに戻り、地裁は新しい是正措置を探ることになる。

 マイクロソフトにとっては予想以上に有利な判決結果となったが、連邦高裁は同社が独禁法に違反しているという地裁の下した判断は認めているし、いっこうに終わりを見ないこの戦いにより、同社のイメージが悪くなるのは明らかだ。

 市場はこの判決結果をどう受け止めたのだろうか? この日、同社の株価は一時的に上昇し、格上げを行った証券会社もある。一方、業界の受け止め方は複雑で、マイクロソフトのライバルであるサン・マイクロシステムズやAOLが競走上有利になるかどうかについてはさまざまな意見が飛び交った。また、クリントン政権に比べ産業に介入しないブッシュ政権の政策が今後どう影響するのか未知数だ。さらには、マイクロソフトの次の戦略“.NET”で提供する「Windows XP」や「Hailstorm」で、同社が同じ試みを繰り返すのではないかと見る関係者も多いようだ。

 同社と連邦司法省の戦いは、1998年に司法省が独禁法に違反しているとしてマイクロソフトを訴えたことから始まる。同年11月にジャクソン(Thomas P. Jackson)判事が“マイクロソフトはインテル互換PCのOS市場において強大な独占力を持っている”との事実認定書を提出、調停人の指名を行い、判決か和解かで決着を試みた。和解が成立せずに判決にもつれこんだのが2000年4月。その2カ月後の6月、連邦地裁はマイクロソフトの独禁法違反を認め、同社の分割命令を出した。マイクロソフトはその判決を不服として上訴していた。

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