[Analysis]

米テロ事件がIT業界に与えた課題

2001/09/21

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 全世界を震撼させた米国同時多発テロ事件の発生から、10日が経過しようとしている。被害を受けたニューヨークやワシントンD.C.では、懸命の救助作業が続いているが、死傷者数、行方不明者数ともに増える一方だ。

 米国では、事件後5日間閉鎖していたニューヨーク証券取引所がオープンするなど、徐々に復興に向かっている。本拠地が西部に集中しているIT業界は、深刻なダメージは少なかったものの、数人の死傷者が出たほか、部品調達の遅れ、通信インフラ企業の機器損傷などの被害があったようだ。現在、米経済を牽引する業界各社は復興に向け、現金の寄付や技術支援などさまざまな救援活動を行っている。ブッシュ米大統領の依頼を受けたAOLでは、全世界のユーザーにインターネットでの寄付を呼びかけており、集まった金額はすでに570万ドルを上回った。

 この惨事の中、ITは少なからず人々の役にたった。ハイジャックされた機内から、あるいは、崩れかけたビルのガレキの下から家族に連絡をとる、これは、携帯電話でしかできないことだ。また、情報が瞬時に全世界に流れたことや、メディアや政府などの関連組織がWebサイト上に最新情報を提供することで、多少は混乱が軽減されたことだろう。

 だが、課題も残した。日本では事件直後、インターネットへのアクセス数増減に反応はなかった(ビデオリサーチネットコム調べ)。50%を上回っていたとされるTVの視聴率を鑑みると、メディアとしてのインターネットがいかに未熟かを物語る結果だ。また、テロに限らず火災や地震など、災害はいつなんどき起るかわからない。それを前提としたシステム構築がされているだろうか――。こうしたことが、IT業界全体に問われている。

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