[Analysis]

HPのコンパック買収に創業一族から反旗

2001/11/13

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 ヒュ−レット・パッカードがコンパックコンピュータの買収を発表したのは、9月上旬だった。しかし、この発表に対するアナリストや市場関係者の評価は低かった。売上高や製品の市場占有率は合併によって上がるが、合併によるシナジー効果は見えず、図体が大きいだけの恐竜が誕生するだけだと見られ、両社の株価は下げ続けた。

 両社のCEOは、複数のメディアのインタビューに応じて、合併の正当性を訴えた。それが効果を奏したのか、両社の株価は徐々に持ち直し、このまま株主総会の決議、政府の合併認可(連邦取引委員会)に進むかと思われた。

 ところが先週、HPの共同創業者一族のヒューレット家と関連財団がこの合併に反対すると発表。故ヒューレット氏の子息ウォルター・ヒューレット(Walter Hewlett)氏は、「コンパックとの統合は、魅力のないPC事業を増やすだけで、HPの株式の価値を下げる。HPは単独で利益を稼ぎ出すプリンタビジネスに投資すべきだ」と主張した。その後、もう一方の創業者故パッカード氏の子息デビッド・パッカード(David Packard)氏(HPの取締役メンバー)も、この合併に反対を表明。しかし、双方が所有するHPの株式は約10%前後しかない。そこで注目を集めているのが、パッカード氏が運営にタッチしていないパッカード家関連の財団(The David and Lucile Packard Foundation)の決断だ。同財団はHPの株式を10.3%保有する大株主。同財団は現在合併の可否を明らかにしていないが、今週発表されるHPのレポートで最終的な判断を固めるという。

 いまのところ、パッカード氏を除くHPの取締役メンバーは、あくまで合併を推し進める構えだ。しかし、多くのアナリストや市場関係者からの疑問に対して、両社が新HPのビジネス戦略のメリットを十分に説明できなければ、両社の合併の行方はさらに混迷しそうだ。また、すでに買収される側のコンパックの従業員の間では動揺が広がっているというが、HP、コンパックの両社が合併のメリットを説明しなければ、社外だけでなく、両社の従業員も、この合併に否定的になるかもしれない。両社に残された時間は少ない。

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