[Analysis]

日本版CMMの混とん状態から見えるもの

2001/12/27

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 システム開発の指標として日本版CMMを推して来た経済産業省が、沈黙を続けている。同省が日本版CMMの構想を発表したのは今年6月。同月には「ソフトウェア開発・調達プロセス改善協議会中間整理(案)」に対するパブリックコメントの募集も行った。その後、パブリックコメントなどを反映した最終的な報告案を出すとしていたが、いまだに発表がない。

 そもそも経済産業省が日本版CMMを導入しようとした背景には、これまでの政府調達は、数社の大手ベンダだけが入札に参加していたため、ほかの中小ベンダなどにも門戸を開放する必要があること、ソフトに関する品質管理手法が整っていないこと、などの問題があった。

 さきの経済産業省の発表により、CMMは大きな注目を集めた。当初の経済産業省の案では、来年度(2002年度)の政府調達から日本版CMMなどを試行したいともしていた。しかし、パブリックコメントや、産業界、学会などから噴出した批判により、経済産業省は対応に追われ、最終報告を出せない状態との話も聞く。それが現在の沈黙につながっているようだ。

 そもそもの問題は、大手ベンダだけが政府調達の入札に参加する原因は何か、ソフトに関する品質管理手法をどのように担保するのかといったことにあったはずだ。日本版CMMは、実現したとしてもその問題解決の一翼を担うに過ぎない。同省が公表した資料にも、安値受注の問題(これはある一定金額以上の入札の場合の、政府の落札計算式の問題)、発注側の能力不足、1年という日本の会計制度上の問題(プロジェクトなどによって複数年度会計を実施している国も存在する)などが列挙されている。

 これらの問題の解決には、日本版CMMに固執する必要はない。最終報告を出せないとしても、手法はほかにもあるはずだ。彼らが本当に日本のソフト産業の将来を憂えているのか、それとも新たな“省益”を日本版CMMに見出しただけなのか、その結果を待つ時間はない。

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