[Analysis]

日本の大手ハードベンダの戦略に欠けるもの

2002/02/05

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 NEC、日立、富士通など、国内大手ハードベンダは2001年、半導体事業などの不振から大幅な赤字決算に追い込まれた。その対策として各社は、大規模な人員整理、半導体ビジネスの撤退ないし縮小、ソフト/サービス事業の強化、拡大などを核とした戦略を発表した。

 各社がソフト/サービス事業を強化、拡大などを訴えるのは、1993年に米IBMのCEOに就任したルイス・ガースナー氏の手腕・実績と関係がありそうだ。その当時はメインフレームやオフコンから、クライアント/サーバ・システムへとダウンサイジングが進行中で、その影響を最も受けた企業の1つがIBMだった。ガースナー氏によるIBMの事業再構築の結果、最近の米IBMの決算はほかのIT企業よりも減収、減益幅が小さく、エンタープライズ分野の勝者として君臨している。何よりもそれを象徴するのは同社の株価だ。1993年と比べ、現在の株価は800%以上も上昇し、市場価値は1,800億ドル増加した。

 日本の各社がここに来てソフト/サービス事業に力を入れ始めた理由は、海外企業との価格競争が激化する半導体を含めたハード事業だけでは限界を感じているためだ。また、時代はオープンシステム化し、ソフト/サービスの重要性が高まり、また需要もある。そしてIBMという成功事例も見ている。つまりは「IBMの成功を我らにも」という考え方だ。

 しかし、IBMの後追いをする限り、勝者にはなれない。各社がソフト/サービス事業に力を入れれば、結果として競争は激化し、価格競争に巻き込まれる。それに巻き込まれることなく市場を制覇するためには、価格競争力だけではなく、ソフト/サービスの付加価値をどこかに付けられるかにある。各社の戦略で足りないのは、そうした事業の中での“選択と集中”。それらの具体的な計画を発表し、実行できるかどうか、日本の大手ハードベンダの再建は、そこにかかっている。

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