[Analysis]
Webサービスは、波乱のクライアント/サーバ時代を告げるか?
2002/04/26

1990年代にもてはやされたクライアント/サーバシステムの失敗は、クライアントアプリケーションの配布や更新などの管理コストが非常に高くついたことが、大きな理由の1つだった。その反省から、現在多くのシステムではクライアントにWebブラウザを利用し、クライアント管理を事実上不要にしている。
しかしWebサービスの登場によってこの構図に再び変化が起きそうだ。
Webサービスでは、HTMLの代わりにXMLでデータを送受信するため、HTMLよりも複雑な情報をクライアントとサーバ間でやりとりできる。そのため、Webブラウザよりもリッチなクライアントを実現しやすい。
マイクロソフト、IBM、BEAシステムズ、サン・マイクロシステムズ、オラクルといったWebサービスを強力に推進しているベンダの中で、クライアントアプリケーションの開発環境ではマイクロソフトが明らかに抜きんでている。すでに発表された同社の開発環境Visual Studio .NETの評判は高い。Office XPをWebサービス対応のクライアントにするツールキットの提供も開始している。Webサービスで受け取ったデータをExcelのシート上でグラフとして表示する、といったことが可能になる。
このようなリッチなクライアントアプリケーションとサーバの組み合わせは、クライアント/サーバ時代の再来を予感させる。
一方、ここ数年アプリケーションサーバ市場の成長にうまく乗ってきたマイクロソフト以外のベンダは、こうしたWebサービスにおけるクライアント分野の新しい可能性に戸惑いを感じている。しかし彼らの戦略は、引き続き自社の得意分野であるアプリケーションサーバの機能や性能、スケーラビリティやサーバにおける開発環境、そして最新機能のキャッチアップなどに注力され、「サーバサイドこそビジネスの生命線」という主張をさらに強めることだろう。
果たしてWebサービスの時代に、リッチなクライアントアプリケーションはどれだけ支持されるのか。時代は再びクライアント/サーバの仕組みに帰っていくのだろうか。その流れが、今後のWebサービス市場におけるベンダの力関係に大きな影響を及ぼしていくことは明らかだ。
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