[Analysis]
IPv6、普及のためのキラーアプリとは?
2002/05/21
IPv6普及に向けた準備は着々と整いつつある。しかし、業界の一部には、IPv6普及への懐疑論が依然くすぶっている。このことは、日本を中心としたアジア圏よりもIPv4を潤沢に利用でき、IPv6への性急な移行が必要ない米国で根強い。しかし、IPv4の限界が見えている以上、結局は移行することは避けられない。業界内には、こうした声を払しょくするためにも、キラー・アプリケーション待望論がある。
IPv6普及のキラーアプリとしてよく挙げられるのは、PtoPやIP電話といったコミュニケーション系のアプリケーションだ。その理由として、これらは端末同士が1対1で通信をすることが前提になっており、すべての端末にIPアドレスを振ることが可能なIPv6の特徴を生かせるものだからである。だが、これには2つの問題がある。1つは、これらのアプリケーションが「IPv6の潤沢なIPアドレス空間」という特性を生かす発想からピックアップされたものであり、「利用者にとって魅力的なアプリケーション」という視点で考えられたわけではない点だ。もう1つは、それらアプリケーションの具体的な用途の立案や使い方の提案などが、いまだ不十分な点である。
IPSecといったセキュリティ機能が標準で組み込まれているなど、IPv6自体は非常に便利なもの。だが既存のアプリケーションを利用するレベルでは、ある程度までは現状のIPv4で実現できており、必ずしもIPv6のアドレス空間や新機能を必要とするわけではない。また、PtoPアプリケーションといえばNapsterやWinMXを連想するかもしれないが、現状ではそれらの主たる用途はファイル交換に過ぎず、IPv6普及のためのブレイク・スルーとなるかは疑問だ。ここで考えなければならないのは、PCが前提になっている世界を打破して、多くの利用者を引きつけるような工夫が必要とされていることだろう。そうでなければ、今後の利用者の増加にはつながりにくい。
1990年半ばから始まったインターネット・ブームのキラーアプリはWindows 95だった。では、そのユーザー群をIPv6の世界へと導くキラーアプリは何だろう? その答えの1つは、PC以外にあるのではないか。例えば、ゲーム業界の勢力地図を塗り替えた「ファイナル・ファンタジー」、そのオンライン版がIPv6専用だったらどうか。PC用オンライン・ゲームとはユーザー層が違うため、新しいインフラをすんなりと受け入れることだろう。また、既存の電話が単にIP電話になるのではなく、TV電話になるとしたらどうか。TV電話は送受信するデータの量が増えるため、既存の電話システムでは実現しにくい。そこで、IPv6ベースの高速なインフラを提供すれば、ユーザーは難なく受け入れるはずだ。もっとも、それら利用者はIPv6だろうがIPv4だろうが関係ないだろうが……。
重要なのは新しいインフラを整備して、新しいサービスを用意し、(PCの世界とは直接関係ない)新規ユーザーをどんどん取り込んでいくことだ。環境さえできてしまえば、その後でPCユーザーを引き込むことは難しくないだろう。
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