[Analysis]
果たしてマイクロソフトは信頼を回復できるのか?
2002/06/07
このところ、マイクロソフトは同社のセキュリティへの取り組みを積極的にアピールしている。昨年、Windowsのセキュリティ・ホールを突いた攻撃や悪質なウイルスが多く発生し、大きな騒ぎとなった。最近のマイクロソフトの熱心な主張は、発生の原因を作ってしまった同社に対し、責任を問う声が業界の内外から上がっていることを受けてのものだ。
マイクロソフトが重い腰を上げたのは昨年10月のこと。「ストラテジック テクノロジー プロテクションプログラム(STTP)」を発表し、セキュリティの確保と維持を支援するとした。具体的には、ウイルス関連の問い合わせへの応対やオンライン上でのツールキットの提供などや、より広義かつ長期的な取り組みも含み、脅威の防止に努めるというものだ。
続いて今年1月より引用している文句が“信頼できるコンピューティング:Trustworthy Computing(TC)”。同社のビル・ゲイツ(Bill Gates)氏自らが、“電気や水道並みの安心して使えるコンピューティング環境を実現しよう”と呼びかけのメモを送ったという。このTCは、設計段階からの安全性確保の徹底やプライバシーの保護などの多岐にわたる項目で構成されている。
今年4月に同社CSS(最高セキュリティ責任者)に就任したスコット・チャーニー(Scott Charney)氏(米司法省でコンピュータ犯罪にかかわるなど、この分野で突出したキャリアを持つ人物だ)は、TCの実現には「10年かかる」と述べる。ソフトやハードのベンダ、ISPなど業界全体が強調する必要があり、一般コンシューマをはじめとしたユーザーの教育にも時間がかかる、というのが同氏の“10年”という数字の根拠だ。
セキュリティに関しては、ITが社会生活に不可欠なものとなりつつあるだけに、同社だけでなく業界全体、さらには政府をも巻き込んで、経験からの学習、そして体制作りへと結びつけていかねばならない。だが、すべての対策が時間を要するわけではないし、指摘の多いパッチの管理方法や旧バージョンのサポート問題など、同社が独自で解決できる問題もある。OSではほぼ独占的地位にある同社、ある程度の責任がついて回るのは当然といえよう。
新スローガンでどこまで同社が信頼を回復できるのか。これから出てくるであろう効果に期待したい。
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