[Analysis]

UDDIを巡る悩ましい問題

2002/07/16

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 技術標準の策定という作業に苦悩は付きものだ。7月11日から2日間にわたって行われたWebサービスの関連イベント「WEB SERVICES Conference」でも、随所に艱難辛苦という名の絶壁が立ちはだかっているのを感じた。

 特別講演に立ったW3CのWeb Services Activity Lead ヒューゴ・ハアス(Hugo Haas)氏は、「Webサービスの可能性を最大限に引き出すために」と題するプレゼンテーションを行った。そこで語られたのは、W3Cの組織概要やSOAP1.2及びWSDL1.1の策定作業に関してである。気になったのは、UDDIに関する言及がなかったことだ。

 確かに、UDDIはW3Cではなく、業界団体の産物という側面はある。だが、現在Webサービスを語るうえでUDDIの存在を無視することはできない。ハアス氏は講演後、「Webサービス提供者のリストを手に入れる方法にはUDDI以外にも、URIの利用、レジストリサービスの利用など多様な方法がある。必ずしもUDDIに限定されるものではない」とコメントし、意図的に言及しなかったわけではないことを強調した。

 UDDIが策定されたのは約2年前のこと。当時はWebサービスの登場とともにその標準化にかなり期待されたものだが、セキュリティや妥当性検証に問題があるとして、徐々に当初の熱は冷めていってしまったようである。そもそも、企業は外部からのランダムでフリーなアクセスを許可するならば、セキュリティの堅牢性は不可欠な要素だろう。

 このような「パブリックUDDI」ではなく、限定された取引先のみアクセス可能とする「プライベートUDDI」が登場し始めている。一部の大企業数社ではすでに導入し、効果を上げているという。「プライベートUDDI」を皮切りにWebサービスの普及が進むとする声もある。

 ただし、「プライベートUDDI」が存在を主張することは、標準化とは逆行する現象ともいえる。企業群ごとに、独自機能を持つディレクトリが乱立するという負の予測をなくすことはできない。このことは、Webサービスの標準策定を行うW3Cにとって歓迎すべき事態ではない。W3Cにとって、標準が分裂することほど恐ろしいことはない。ハアス氏があえて、このような「悩ましい問題」を抱えるUDDIに言及しなかったのも、うなづけるというものである。

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