[Analysis]

XMLの普及を妨げるもの

2002/08/02

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 BtoBそしてWebサービスと、XMLの応用に関しては相変わらず高い関心が寄せられているが、現実の企業システムでは、XMLそのものの利用はそれほど進んでいないようだ。XMLのメリットは認識したが、実装を後押しするものがないというのが大きな理由のようだ。

 XMLのこのような現状に関して、先日開催されたあるカンファレンスのパネルディスカッションでは次のような声が聞かれた。

 「XMLの普及には、タグやボキャブラリの標準化が不十分だ」と述べたのはXMLコンソーシアムエバンジェリスト/Webサービス推進委員会 委員長 岡部惠造氏。つまり、実用を想定した、業界・産業別、企業グループ別の標準化がまだ不十分だという。XMLを用いてパートナーとビジネスプロセス連携を行うなど、先進のITを大胆に採用してきたカスミ顧問(兼ウルシステム取締役)の神林飛志氏は、既存の標準との互換性が重要と付け加える。そのためには、「ユーザーが積極的に標準化に参加し、議論を重ねるしか方法はない」(神林氏)。

 ユーザー側には、新しい技術に伴うリスクを負いたくないという心理が強く、標準化作業への不参加、ひいては先進技術の導入の遅れにつながっている。これに対し、ガートナー ジャパン リサーチディレクター 栗原潔氏は、「ITを経費ではなく投資として考えるべき」とアドバイスする。投資はリターンを生む。リスクは負うがそれにより得られるものも望めるという発想の転換が必要ということだろう。

 課題は、ユーザーだけにあるのではない。ベンダ側にもある。ユーザーのXMLへの関心は高いにもかかわらず、それを救い切れていないという点は大きな課題ととらえるべきだろう。このように、普及が遅れる理由はユーザーとベンダとの双方にある。

 XMLは当初想定されていた文書管理などのメリット以外に、データ構造の柔軟性という特徴から、データ交換という新たな用途を見いだした。そしてBtoBやWebサービスのハイプ(過大な表現)へとつながった。だが、それらは確かにXMLの認知を広めたが、大きな絵を描くだけで足元を固めるには至っていない。このことは、ユーザー、ベンダともに問題視する必要があるだろう。

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