[Analysis]

囲い込みは“絶対悪”か?

2002/08/20

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 “ITシステムはオープン環境”が常識となった現在、1990年代初めまで続いた国内ITメーカーによる1社囲い込みの戦略は時代遅れとの認識も、当然のように常識となっている。しかし、必ずしも囲い込みが“絶対悪”かというと、そうではない側面があるようだ。

 オープン環境の謳い文句として、「ベンダ非依存、顧客ニーズ最優先のシステム構築」というものがある。メインフレーム全盛時代、ハードウェアがある1社のメーカーから導入された場合、ソフトウェアもそのメーカーや関連子会社、あるいは関連パートナー企業による作りこみが行われた。顧客に選択肢はない。すべて丸投げである。

 オープン環境が普及し始めた当初、ある外資系ITベンダの幹部は国内市場への食い込みが予想以上に困難な状況を指し、「なぜ性能が悪く、価格の高いシステムが市場でまかり通るのかわからない。異常だ」と語気を荒げたのを聞いたことがある。

 しかし、顧客がさまざまなベンダの製品を選択できるようになって頻出してきた問題があることも確かだ。うまく動作しない。バージョンアップのタイミングが合わない。サポートがうまく行われない、等々。このような点こそシステムインテグレータの腕の見せ所のはずだが、複数のベンダ製品が混在する環境では、彼らにも手の出しようがない要素があることも確かなのだ。

 オープン環境という柔軟なシステム構成の利点を活かしながら、1社囲い込みで成功を収める企業に、IBMやサン・マイクロシステムズが挙げられる。彼らはハードウェアからソフトウェア、サポートまで一貫して製品を提供できる数少ないメガベンダである。複数ベンダの混在環境と比較すれば、製品間の互換性や相性は、「比較的」よい。顧客にとっても、サポートの窓口が統一され、業務を行う上での煩雑さは「比較的」、減少するはずである。

 オープン環境が当然とはいえ、必ずしも囲い込みが“絶対悪”だとは限らないのである。いずれにしても決めるのは顧客だが。

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