[Analysis]

[Analysis] ヤフーとソフトバンクは“家庭内別居”

2002/11/19

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 ソフトバンクの業績が悪化している。11月15日に発表された2002年9月中間期の決算では、最終損益が558億円の赤字となった。ADSLサービスのヤフーBBに投じた設備投資費や、量販店などで行っているキャンペーンの販促費がかさんだためだ。

 ソフトバンクは、決算発表の2日前に決算発表の市場へのショックを和らげるためか、ヤフーBBを使った有線放送サービス「BBケーブルTV」を発表した。しかし、ソフトバンクが最も力を入れているヤフーBB事業が利益を生み出すようになるには、現在120万人の会員を200万人にする必要がある。ソフトバンクは、それを5カ月以内で可能というが、現在のハイペースで加入者が増え続ける保証はない。

 また、200万人の損益分岐点を突破しても、その後も設備投資は必要だ。さらに他社のADSLサービスとの競争激化によるキャンペーンの通常化や低価格化の進行により、消耗戦となる可能性が高い。ソフトバンクは実に危うい綱渡りをしているように思える。

 気になるのはソフトバンクのグループ企業であるヤフー・ジャパンだ。ヤフーは日本で最も多くのアクセスを誇るWebサイトで、築き上げてきたブランド価値は、ほかのWebサイトを圧倒している。そのヤフーは、ソフトバンクに対して距離を取りたいというのが本音ではないだろうか。ソフトバンクはヤフーの知名度を利用してADSLサービスを開始した。その後もソフトバンク主導でさまざまなADSLの関連サービスを始めている。ヤフーの知名度を利用した結果、初心者も含め多数のADSLの加入者を集めた。しかし、これまでの経緯は、ヤフーにとって冷や汗の連続ではなかっただろうか。大々的にサービスを開始したがサポート体制が整わず、ユーザーからのクレームが殺到。12MbpsのADSLサービスをめぐっては、同業他社の取締役をソフトバンクが訴えている。ソフトバンクが主導したヤフーBBの展開方法は、ヤフーのビジネス手法とは明らかに異なる。

 ヤフーBBで大きなトラブルが起きたり、万が一、ソフトバンクが経営危機に陥った場合、ヤフーのブランド価値や、市場での信頼を大きく損ないかねない。好調を維持しているヤフーの経営に対する大きなリスク要因になる。11月13日のBBケーブルTVの発表会見には、ヤフー関係者の出席はなく、ヤフー側の冷めた姿勢が感じられた。

 ソフトバンクが経営危機に陥ってヤフー株を手放しても、ヤフーなら株の引き受け先はいくらでもあるだろう。ヤフーにとっては、これ以上ブランド価値を落とすようなリスク要因が増える前に、ソフトバンクグループの呪縛を解きたいと考えても自然だろう。しかし、ソフトバンクにとってヤフーは、最後の虎の子で、そう簡単に手放したがらないだろう。両社の“家庭内別居”は、当分続きそうだ。

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