[Analysis]

インテルのワイヤレス戦略に“アジアの影”

2003/03/04

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 「コンピューティングと通信の融合」を目指したインテルの“ワイヤレス戦略”が続いている。2月に米国で行われた「Intel Developer Forum(IDF) Spring 2003」では、サーバ向けCPUの最新ロードマップ発表に負けぬほど、ワイヤレス関連技術が注目されたようだ。

 インテルのワイヤレス戦略を象徴する製品は、3月12日に発表されるCentrino(セントリーノ)だろう。セントリーノはCPU、チップセット、無線LAN対応チップで構成されるモバイル向けのプラットフォーム。インテルがCPUを含むプラットフォームという形で製品を発表するのは初めてだ。

 インテルはセントリーノの発表に合わせて、国内でワイヤレス普及のため大規模なキャンペーンを展開する。都内各地にインテルが主導する形で、公衆無線LANのスポットを設置。公衆無線LAN回線を提供するインターネット・サービス・プロバイダと組んで、共同でプロモーションを予定している。シスコシステムズとも協力して、企業内での無線LAN利用で互換性の検証や最適化、セキュリティの確保などをサポートする。

 インテルのワイヤレス重視は、ワイヤレス市場が活況になることで、セントリーノの販売促進、ワイヤレス対応チップの拡大などインテルの収益にプラスになると見ているからだ。

 さらにインテルが従来の半導体ベンダから脱却を図っているようにも見える。インテルには“アジアの影”ともいえる巨大なライバルがいる。韓国のサムスン電子だ。DRAMや携帯電話事業が好調なサムスン電子は、2002年決算で純利益がインテルの2倍近くになった。半導体ベンダにとって最重要ともいえる設備投資額でも2003年はインテルに並ぶほどに。

 もちろんインテルはCPU市場が主力で、サムスン電子はDRAMなどが中心。市場を奪い合うライバルというわけではない。だが、サムスン電子の成長が続けば、インテルが“半導体最大手”の立場を追い落とされる可能性がある。そうなれば業界でのリーダーシップにも限界が出てくるだろう。NECと日立製作所が出資する国産半導体ベンダ、エルピーダメモリに対してインテルが出資するのではないか、とうわさされる背景には、「DRAM市場をサムスン電子が独占することにインテルが懸念を持っている」という業界の認識があるからだ。インテルはワイヤレス市場を次の成長市場と判断し、コンピュータ事業とネットワーク事業の総合力を武器に、次世代半導体ベンダへと変身を遂げるべく、次の一手を探っているようにも思える。

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