[Analysis]

マイクロソフトの脱“勝てば官軍”

2003/04/22

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 発表を聞いて「マイクロソフトは“勝てば官軍”のビジネスから脱却するのか」と率直に思った。マイクロソフトが、4月16日に発表した公共分野への取り組み強化を目的に専門部隊を創設するという発表だ。発表では、政府向けライセンスプログラムや教育分野への取り組み、デジタルデバイド解消のためのITリテラシー向上の施策なども明らかにした。

 これらの事業はマイクロソフトがこれまで行ってきた事業の延長線上にある。しかし、あらためて発表したことがマイクロソフトのソフト路線への変更を示しているように思えた。米本社も含めてマイクロソフトのこれまでのビジネスは、勝つためならどのような戦略でも採るという積極的な姿勢だった。ライバル会社に言わせれば「えげつない」だ。

 “勝てば官軍”路線に変更の兆しが見え始めたのは、2001年にCode Redなどコンピュータ・ウイルスが世界中で流行し、マイクロソフト製品が強く非難を浴びてからだ。マイクロソフトは全社が一丸となってセキュリティ対策を強化することを表明。近く登場するWindows Server 2003の開発でもセキュリティ対策が一番の課題となった。

 国内では電子政府に採用するシステムをめぐって、マイクロソフト製品を非難する声が昨年秋から多く聞かれるようになった。「マイクロソフト製品はセキュリティが甘くて危険だ」「ソースコードを確認できないブラックボックスで対処ができない」「外資系企業が作ったOSは心配だ」など、多くは誤解と偏見に満ちた意見だった。しかし、それがマイクロソフトに対する社会的イメージの一部だったのは事実だ。2月にはビル・ゲイツ会長が政府、自民党を訪れて大臣や議員らと意見交換し、マイクロソフトの取り組みを説明する場面もあった。

 公共分野への取り組みを説明したマイクロソフトの取締役 経営戦略担当 東貴彦氏は、「社会的貢献を明示的に示さないとこれ以上のビジネスは難しい」と、取り組みの背景に強い危機感があることを説明した。マイクロソフトに対する社会的な評価を向上させて、今後の国内でのビジネスにつなげたい考えだ。政府向けにソースコードを公開し、同社にとって直接利益を上げることがない教育分野やITリテラシーの向上施策に投資する。うがった見方をすれば、公共分野への投資も“勝てば官軍”の作戦なのかもしれない。しかし、マイクロソフトがライバルを徹底的にたたく従来の戦略から脱しようとしているのは確実だろう。

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