[Analysis]

お昼ごはんをグリッド化すれば

2003/09/17

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 サン・フランシスコで開催された「OracleWorld 2003」を取材した。2日目の米オラクルの会長兼CEO ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏の基調講演を始め、会期中は「グリッド」という言葉をいたるところで聞いた。それぞれの講演はもちろん、配布されるプレスリリースや会場内の飾り付け、来場者送迎バスのラッピング、サン・フランシスコ市内のポスターなど、まさしくグリッドだらけだった。

 グリッド漬けになるに従い、記者団や日本オラクル関係者の間で、何でもグリッドに関連付けるようになってきた。例えば……。「各社の記者が同じテーマで記事をそれぞれ書くのは無駄。各記事を抽象化して、リソース・プールを作り、媒体に応じて記事を出稿したら」とか、「米国での広報態勢と日本での広報態勢はグリッド化されて、常に同期が取れている。どちらに取材してもOK」などなどだ。さらには「周辺のレストランを仮想化して、どのレストランでも幅広いメニューを食べられるようにならないか」など、取材疲れも重なって妄想は広がっていった。

 よく知られるようにグリッド・コンピューティングとは、電力のパワーグリッド(高圧送電網)からきている。われわれが電力を使う場合に、その発電元を意識することがないように、コンピューティング・リソースも個別のサーバやストレージに依存することなく、必要なときに必要なだけ使えるようにする、という考えだ。グリッドを実現するうえで重要になるのが、サーバやストレージの個別リソースを仮想化すること。それぞれの差異を見えなくして、1つのシステムとして扱うことができるようにする。グリッド化することでシステム全体の利用率が向上し、運用管理も楽になるのだ。

 われわれの妄想が広がったようにグリッドの考え方は、情報システムだけにとどまらない。企業の人材を仮想化し、必要なときに必要な人材を調達できるヒューマンリソース・グリッドなども現れるのではないか。派遣スタッフの雇用拡大やアウトソーシングの普及もこの流れにあるだろう。不透明な経済状況を考えると、成長に合わせてシステムや人材を無尽蔵に増大させるという企業は少なくなることが考えられる。必要なときに必要なだけ、しかもコストは低く、というグリッドの考え方は、今後も支持を集めるだろう。

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