[Analysis]

坂村健教授は余裕しゃくしゃく

2003/09/30

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 情報家電向けOSのTRONに注目が集まっている。もちろんTRONは情報家電向けOSとしてすでに大きなシェアを獲得しているが、その存在感がさらに増しているのだ。9月25日にはマイクロソフトがTRONベースで組み込みOSを開発している「T-Engineフォーラム」に参加すると発表。T-Engine上でWindows CE .NETを動作させるための共同開発をT-Engineフォーラムとマイクロソフトが行うことになった。

 会見した坂村教授は、Windows CE .NETをT-Engineにおける“ミドルウェア”と位置づけたうえで、「マイクロソフトのT-Engineフォーラムへの参加は、オープンアーキテクチャの土俵でマイクロソフトもやってみようという1つの決意だ。オープンな環境でマイクロソフトがどう展開するか、非常に興味がある」と述べた。

 マイクロソフトはT-Engineフォーラムの参加企業の1つに過ぎず、Windows CE .NETも、情報系OSの1つというのが坂村教授の考え。世界最大のソフトベンダを前にしても、坂村教授は余裕を感じさせる。

 坂村教授が余裕を見せるのは、サーバ向けのOSでマイクロソフトのライバルとなっているLinux陣営とも良好な関係を結んでいるからであろう。今年3月には組み込みLinuxを開発している米モンタビスタの「MontaVista Linux」をT-Engine上に移植すると発表した。T-Engine上にWindows、Linuxの2つのOSが走るということにもなり、T-Engineはハード制御プラットフォームとしてデファクトスタンダードの位置をつかみとりつつあるといえるかもしれない。

 政府の後押しも坂村教授にとっては心強い。経済産業省幹部は講演などで「情報家電向けにはTRONやLinuxなどオープンなOSが望ましい」と発言。マイクロソフト1社が独占し、国内企業が入り込めなかったPC向けOSの反省から、TRONを強力にバックアップする姿勢を強調している。

 高い信頼性、セキュリティが求められるOSは、オープンな環境で業界が共同開発し、各社はミドルウェアやアプリケーション分野で製品に特徴を付ける、という坂村教授らが考えるソフト開発が今後の主流になるのか。欧米ベンダの巻き返しや、ほかのソフト分野へのTRONの浸透など、しばらくは坂村教授の動向が注目を集めそうだ。

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