[Analysis]
日本IBMが中小企業に本腰を入れる意味
2003/10/07
日本IBMが中堅・中小企業市場へのてこ入れを急いでいる。このために同社では「製品・サービス」と「ビジネス・パートナー」の2つの側面から新たな事業戦略を立てた。そのコンセプトは「ちょうどいい機能とスケールを、ちょうどいい価格で」である。
同社の定義では、中堅企業とは100〜999人程度の従業員数の企業で、中小企業とは従業員100人以下の企業である。「大企業のシステム需要は一巡し、今後は中堅・中小企業の番だ」と日本IBM ゼネラル・ビジネス事業部長の大石憲司氏は言う。さらに、「中堅・中小企業市場はインフラの整備を終えつつあり、ようやくアプリケーションの構築需要に火がつき始める」とも。
同社の場合、地元のトップ企業や地銀、県、市といった大規模顧客についてはカバーしてきたものの、地場の中堅・中小企業については手薄になりがちな傾向があった。ここを補完しようとするのが、今回の新戦略の目玉である。
大規模顧客から中小顧客まで幅広くカバーできる販売網の構築という側面において、日本IBMは、日本電気、富士通に大きな遅れをとった、という歴史的な背景がある。地方都市における日本電気、富士通の影響は凄まじい。日本電気、富士通は各地方拠点に支社および支店を設け、地場のビジネスパートナーと密接な関係を、長年に渡って徹底的作り上げてきたのである。地方都市における「つきあい」の重要さは、東京圏とはまったく比較にならない。そして、このような構造は、テクノロジの変遷によって多少の綻(ほころ)びができているとはいえ、まだまだ崩壊するには程遠い。
日本IBMが今回立てた戦略は、国産ITベンダが支配する全国の中堅・中小企業市場に食い込もうとするものである。まずは、ビジネス・パートナーの強化を行い、販売網の基盤を強化しなくてはならない。同時に顧客企業に対する存在感を強めなくてはならない。社内の体制も改めて見直さなくてはならない。一見地味なこの戦略が成功するとき、日本国内のベンダ勢力図に革命が起きるほどのインパクトを生み出すだろう。
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