[Analysis]

うかつな私が知らなかった1999年の事実

2004/03/23

win.gif

 マイクロソフトは、2月9日に開始した「Windowsプラットフォームの理解促進キャンペーン“Get the Facts”」の第2弾として、パートナーの証言をWebサイトに掲載したと3月22日に発表した。証言するパートナーの第1弾として中小企業向けアプリケーションベンダのオービックビジネスコンサルタント(OBC)の代表取締役社長 和田成史氏が「OBCのメインユーザーである中堅中小企業にフォーカスした業務システム基盤として、過去2年間にわたりLinux版の製品を提供しました。しかし、お客さまの要望はもちろん、保守コストや開発生産性においてもWindowsプラットフォームが優れていると判断し、製品のプラットフォームをWindowsに統一しました」と語った。

 うかつで不勉強な私はOBCが今回のマイクロソフトのキャンペーンに合わせてLinux対応製品の開発を取りやめて、Windows対応だけにしたのかと早とちりしたのだが、そうではなくOBCがLinux対応製品の開発を取りやめたのは2000年の話だ。

 証言の中で和田氏はLinuxについて「1999年当時のLinuxは中堅中小企業基幹業務システム開発における技術情報や開発者、および生産性の高い開発ツールが少なく、また、実際に販売されるパートナーさまも中堅中小企業向け基幹業務システムのマーケットでは、非常に少ないという状態でした」と語り、中小企業向けのLinuxシステムの構築で問題となったのは「短期間かつ低コストで開発できるツールがなかったこと」と指摘している。

 一方Windowsについて和田氏は、「マイクロソフトの提供する開発ツールは、業務システム開発のうえで最も優れているといえるでしょう。同じ中堅中小企業向け基幹業務用システムを開発する場合、LinuxやJavaプラットフォームで提供される開発ツールに比べて数倍、フレームワークまで含めると2〜3倍の開発生産性を実現できます」と評価しているのだ。

 和田氏が指摘した中小企業向けLinuxの課題は1999年当時の状況がベースになっている。確かに第1次Linuxブームともいえた1999年、2000年当時は和田氏が指摘したような状況で、ビジネスとしてミッションクリティカルな分野でLinuxを使うのはリスクが高いと認識する企業が多かっただろう。一度参入しながらも製品開発を取りやめたOBCの判断は間違っていなかったともいえる。

 ただ、2004年のLinuxを取り巻く現状はどうだろうか。Windowsのような業界全体のサポートは難しいが、和田氏が指摘した1999年当時の課題の多くは克服されつつあるといえるのではないか。導入実績も金融機関のミッションクリティカルな分野から、OBCが得意とする中小企業の市場までカバーが広がっている。そのLinuxの広がりに危機感を持ったからこそ、マイクロソフトは「Get the Facts」キャンペーンを大々的に展開しているのではないだろうか。

 マイクロソフトによるとパートナーによる“事実”の証言は今後も続き、ユーザー企業なども積極的に登場させたいとしている。

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)