[Analysis]
足りないのはソフトウェア工学だけ?
2004/10/05
情報処理推進機構(IPA)がソフトウェア開発のための環境を整備する新組織「ソフトウェア・エンジニアリング・センター」(SEC)を設立した。SEC所長の鶴保征城氏は「ソフト開発に統一的なものさしが欠けているため、納期遅延や不具合、コストオーバーが発生している」とソフトウェア開発を巡る問題点を指摘する。経済産業省の商務情報政策局情報処理振興課 課長 小林利典氏は日本のソフト開発の現状について「工学的な知識に基づく手法が確立されていない」とし、だから失敗するソフトウェア開発プロジェクトが後を絶たないのだとほのめかした。
「ソフトウェア工学の不在」はソフトウェア開発の問題点を指摘するとき、必ず俎上(そじょう)に上げられたきた常套句(じょうとうく)である。そして、それは確かに正しい指摘である。だからこそ、開発現場ではいまでも方法論に関する活発な議論が繰り広げられているのである。開発者の頭の中にはいつも「いかに効率的に、いかに失敗することなく、複雑で巨大なプロジェクトを運営していくか」という考えがある。もっとわかりやすくいえば、「どうすれば早く仕事を切り上げて家に帰れるか」ということだ。プロジェクトに携わる立場や役割は違うけれど、目指す目的は皆一緒である。
一方で、ソフトウェア開発にかかわるすべての問題を「ソフトウェア工学」や「方法論」といった“高級な議論”だけに集約させていいのかといった意見もある。このような意見は実装を主な業務としている開発者からよく聞くことができる。「もっと泥臭い問題が現場にはゴロゴロしているのだ」と彼らはいう。いわないまでも心の中で思っている。
工学的な知見を取り入れた標準的な開発手法の存在はもちろん非常に重要なのだが、そこに現場のノウハウが盛り込まれなければ絵に描いた餅(もち)のままであり、失敗プロジェクトの出来(しゅったい)を食い止める防波堤になりはしない。
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