[Analysis]
UML、ブームの終焉と始まり
2004/11/02
ソフトウェアの設計書を記述するための標準的な言語に「UML(Unified Modeling Lunguage)」がある。記述言語とはいえ、われわれが普段、他者とのコミュニケーションに使用している自然言語(日本語や英語、中国語、ドイツ語などの言葉)とは性質が違う。最大の違いは“厳密性”という要素にある。自然言語はとても柔軟性に富んだコミュニケーションツールだが、それだけに、ゆらぎの振幅が非常に大きい。一言でいえば、非常に曖昧(あいまい)なのである。伝言ゲームを思い出してもらえばわかりやすい。日本語だろうが、英語だろうが、コミュニケーションに参加する人間の数が増えれば増えるだけ、メッセージの厳密性は失われていく。
ソフトウェア開発の世界にはつい最近まで、他者とコミュニケーションを行うための厳密な意味での記述言語がなかった。もちろん、記述言語そのものがなかったわけではない。実際にはさまざまな言語が乱立していた。コミュニケーションの道具は1つであるべきだ。標準化とはつまりそういうことで、UMLがUnified Modeling Lunguageの略であるのは、UMLがIT業界で統一された初めてのモデル記述言語であるという証である。
IT業界の内部では、2000年ごろからいままで、波の大小はあるにせよ、UMLのブームが延々と続いているといっていい。どうすれば簡単にソフトウェアを書けるか? どうすれば失敗しないでソフトウェアを書くことができるのか? IT業界というのは、常に効率を追求する勤勉な業界なのである。しかし、このことはほかの業界でもいえることだが、最新の技術を追求する業界人はえてして、業界外の人々を置いてけぼりにしがちである。実はそれこそが、日本のIT業界の未来を引っ張っている一部の人々が懸念している問題でもある。「UMLを業界外にも普及させなければならない」。IT業界を代表する企業群が、この目的を達成するためにじわじわと動き始めている。
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