[Analysis]

井戸端会議が世界を変える

2004/11/30

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 「アットマーク・アイティとソフトバンク・アイティメディアが2005年3月1日付で合併する。新会社の名称は『アイティメディア』(ITmedia)。資本金は3億6000万円の予定で、ソフトバンク・パブリッシングが55.7%、サンブリッジが12.5%、ソフトバンク・メディア・アンド・マーケティングが11.8%、ヤフーが5.1%、そのほか株主が14.9%を出資する」

 この事実を基に当日の記者会見に出席した報道機関は記事を配信した。アットマーク・アイティ自身が配信したニュース記事「@IT、ITmediaの運営会社が合併、新会社『アイティメディア』に」を含め、そのほとんどは、発表された事実のみを忠実に記事に盛り込んだ。

 通常、読者はニュース記事に盛り込まれた事実に、独自の情報網で獲得したさまざまな事実を掛け合わせ、解釈を引き出す。もちろん、中立を旨とする報道機関でも社説・論説、解説記事などの体裁をとって記者独自の見解を披露するが、報道機関(企業)全体の意思がそれら1本1本の解釈に反映されているのはいうまでもない。

 だから、というわけでもないが、今回の合併発表が業界にどのような解釈を持って迎えられたかを知るには、報道機関が報じる記事を読むよりも、例えば、Slashdot[ITmedia、@ITと合併へ]のスレッドを参照したり、2ちゃんねるのような掲示板を読んだり、個人のブログをのぞく方が有益であった。これらの情報は必ずしも組織的な編集作業を経てはいないという欠点はあるが、逆にそのことが情報の生々しさを証明している。

 報道機関は事実のみを報道し、読者はその事実をもとにさまざまな解釈を生み出すという構図は、考えてみれば、とても正しいことである。かつては井戸端だけで交わされ、外部には漏れなかったうわさが、いまではインターネットを通じて世界中に発信される。情報を取り巻く状況は明らかに変遷している。まさに、井戸端会議が世界を変える時代が来たともいえるのである。例えば、ブログは、従来、(技術的な)敷居が高くて自分のホームページを持てなかった個人に、その簡便性によって、自分の意見を発信する契機を与えた。会員同士が紹介し合いながらコミュニティの規模を拡大させていくソーシャル・コミュニケーション・ネットワークも、個人の情報発信を促進している。

 このような時代、報道機関、雑誌・放送媒体などのいわゆるメディアが、従来型の在り方で存続し続けられるものではない。アットマーク・アイティとソフトバンク・アイティメディアの合併は、その問いを模索するための1つの方法ともいえる。

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