[Analysis]
フィオリーナなきHPが進む道
2005/02/15
米ヒューレット・パッカードのカーリー・フィオリーナ氏が会長兼CEOを2月9日に辞任した。フィオリーナ氏は、部門への権限委譲を求めるHPの取締役会と対立。解任に近い形でHPを去ることになった。フィオリーナ氏の辞任は、HPが2002年のコンパックコンピュータの買収以降続けてきた拡大路線に転機が訪れてきていることを示している。
HPはコンパック買収後、デル、IBMという2つの競合と戦ってきた。デルとはクライアントPCとエントリ、ミドルレンジのIAサーバ、IBMとはIAサーバ、UNIXサーバ、ソフトウェア、そしてITサービスの各事業だ。しかし、HPはいずれも目覚ましい結果を残したとは言いがたいのが現状だ。
コンパックのPC事業を引き継ぎ、デルと戦ってきたPC事業では、低価格路線を突き進むことでシェアではデルにほぼ並んだ。しかし、収益は向上しなかった。2004年10月31日に閉まったHPの2004年度第4四半期の決算によると、PC事業(パーソナル・システム・グループ)の売上高は前年同期比9%増の65億ドルで過去最高となった。しかし、営業利益は7800万ドルにとどまった。IBMによるPC事業の売却に象徴されるように、低価格化が進むPC市場で収益を上げるのは難しくなっている。
そのIBMと競合するエンタープライズサーバ、ストレージの事業では、あまりに多種多様なサーバのラインアップがHPを苦しめているように見える。HPはコンパックとの統合を期に、HP、DEC、コンパックとそれぞれが持っていたサーバを将来的に統合し、インテルと共同開発したItaniumプロセッサベースに移行させるロードマップを発表していた。そのロードマップ自体は着実に進展し、HPはラインアップの集約を進めてきている。HPはItanium搭載サーバの強化のため今後3年間で30億ドルを投資するとしている。
しかし、肝心のItaniumへのユーザー企業の移行があまり進んでいないようだ。32ビットのアプリケーションは将来的に64ビットアプリケーションに移行する、というのが業界の共通した見方だが、64ビットアプリケーションが業務の現場で本格的に利用され始める時期は依然として不明確だ。インテルが64ビット機能拡張を備えたXeonプロセッサを出荷するなど、Itaniumの位置付けも不安定なように思える。Itaniumがいつ業界の標準になるのか疑問に思っているユーザー企業が多く、本格的な移行は見えてこない。
HPの今後で注目されるのは事業の分割だ。収益を生んでいるプリンタ事業や、成長すれば高い収益性が期待できるエンタープライズサーバ、ストレージ、ITサービスの事業を分社化、分割し、小回りがきくようにする。競合が多く勝ち目がない分野では撤退も必要かもしれない。しかし、分社化で特定分野での競争力は増すだろう。まずはHP取締役会がどのような人物を次期CEOに選ぶのか。その選択でHPの今後を占えるだろう。
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