[Analysis]
マイクロソフトが価格破壊を巻き起こす?
2005/02/22
先週、米カリフォルニアで開催されたセキュリティ関連イベント「RSA Conference 2005」の基調講演でビル・ゲイツ氏は、「2005年中に有料のコンシューマ向けウイルス対策製品を提供する予定だ」と語った。この製品の投入により、マイクロソフトはウイルス対策分野において、シマンテック、トレンドマイクロ、マカフィーに続く第4の勢力となるか。
マイクロソフトは2003年8月に発生したワーム「Blaster」以来、ゲイツ氏自身が「Trustworthy Computing」を提唱し、セキュリティへの取り組みを最重点課題として取り組んでいる。その後、2004年夏にはセキュリティを大幅に強化したWindows XP SP2のリリースや、セキュリティ修正プログラム(パッチ)提供を月1回に変更するなど、さまざまな成果を示してきている。特にここ数カ月は、新たなセキュリティ対策製品をリリースするなど動きが活発だ。
1月には、新たなウイルス駆除ツール「Malicious Software Removal Tool」や、スパイウェア対策ソフト「Windows AntiSpyware」のベータ版を無償公開した。それぞれ、マイクロソフトが買収したGeCAD SoftwareやGIANT Company Softwareの技術を基に開発したものだ。ただし、現在無償で提供されている「Malicious Software Removal Tool」は、一部の流行しているウイルスにしか対応していない。一方、ゲイツ氏が基調講演で発表した内容によると、年内にリリースする予定のウイルス対策製品では、多くのメールを媒介としたウイルスに対応するという。また、「GeCAD Softwareの技術を基にした新しいスキャンエンジンを開発している」(ゲイツ氏)とも語っており、新しいスキャンエンジンが搭載される可能性もある。
これを受けて、トレンドマイクロ CEOのエバ・チェン氏は、2月4日に「マイクロソフトがウイルス対策ソフトを当社より安価に提供すれば、当社も値下げを実施する」と発言し、必要であれば価格競争を行う意思を明らかにした。他方、米シマンテック CEOのジョン・トンプソン氏は「RSA Conference 2005」において、「当社の主軸である法人向けのウイルス対策市場では、マイクロソフトの影響はさほど気にしていない。そのほか、ウイルス対策市場の影響を減らすためにVERITAS Softwareとの合併も進める」と語り、経営多角化によってリスクを分散をしている点を強調している。
現状ではマイクロソフトが新たに発売するウイルス対策ソフトの価格を発表していないため、インパクトを予測することは難しい。しかし、低価格やWindowsとのセット価格などを用意してきた場合、他社も価格競争を強いられるだろう。このような価格競争は、コンシューマユーザーにとってはありがたい限りだ。一方、企業向け市場ではほとんどの企業がすでにセキュリティシステムを構築しているか、アウトソーシングしているため、同社がいまから市場に参入しても、なかなかリプレースは進まないと予測される。前述のトレンドマイクロやシマンテックCEOも同様に考えているようだ。しかし、同社が本気で料金や機能で勝負を挑めば企業向け市場も荒れる可能性は大きい。その場合、同社と競合他社との関係はどうなるのか? 数カ月後に発表されるであろうウイルス対策ソフトの詳細次第で、“マイクロソフトの本気度”が明らかになる。
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