[Analysis]
ロボットの商用化を模索するNEC
2005/03/23
先日、NECの最新型ロボット「PaPeRo 2005」の発表会でさまざまなデモを体験した。PaPeRoは1999年に初代がリリースされてから、さまざまな改良が続けられているパーソナルロボットで、今回のPaPeRo 2005は3代目となる。3代目PaPeRoの大きな目玉は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて「チャイルドケアロボット PaPeRo(以下、PaPeRo)」を新たに開発したことだ。パーソナルロボットの商用化への問題は山積みだが、果たして商用化は可能だろうか。
PaPeRoは、人間とのコミュニケーションを目的とした“パートナー型”のロボットだ。コミュニケーションを目的としたロボットには、ほかにHONDAの「ASIMO」やSONYの「AIBO」などが挙げられるだろうが、コンシューマが実際に手に入れることができるのはAIBOくらいだろう。例えば、ビジネスデザイン研究所が販売している「ハローキティロボ」は価格が40万円であり、一般消費者には高価と言わざるを得ない。
PaPeRoは、現時点でコンシューマ向けの販売価格は設定されていないが、NECメディア情報研究所所長 山田敬嗣氏は「主な部品はノートPCのものを流用しているので、大量生産をすればノートPCと同程度の価格による販売も実現可能」と説明しており、将来的にはノートPC程度の価格による販売の可能性も示されている。
従来のロボットは、デモ専門に開発されていたり、特定の環境下でしか機能を発揮できないなど、実用性に乏しいものが多かった。PaPeRoの特徴は、留守番をしている家や保育園/幼稚園における子供とのコミュニケーションなど実環境における利用を想定して作成されている点だ。雑音の多い環境での音声認識機能や、動きの激しい子供向けの認識機能、飽きずに遊ぶことのできる機能、安全性の向上など、さまざまな実用性の向上が図られている。特にデモで興味深かった点は、お笑い芸人ぜんじろう氏と共同研究した「ユーモア会話機能」や、携帯電話でロボットにアクセスしてロボットの“目”や“口”を介してコミュニケーションできる機能だ。
前者の機能は、いままでの“ロボットらしさ”ともいえる「一辺倒な受け答え」を一新するもので、人間の質問に対してボケやツッコミを入れることもできるという。デモではぜんじろう氏とのショートコントを披露していた。後者は、携帯電話を通じて留守宅や幼稚園に居る子供とコミュニケーションを可能とするもので、仕事中の親が空き時間に携帯電話を持たない小さな子供とコミュニケーションを取るのに有効といえる。前者は、コミュニケーション能力を向上させるための機能であり、人間に近づくための努力ともいえる。一方で後者は、ロボットのカメラを通じて“遠隔子守り”を代行するサービスなど、新たなビジネスモデルの誕生に貢献する可能性がある。
ただし、いずれの機能も「実用までには改善の必要がある」という印象を受けた。NECは、3月25日に開幕する愛知万博の会場において半年間の一般公開することで実データを収集し、改善していく予定だ。山田氏は「会場では一般の子供を対象にするので、われわれが想定していない事象も起きるだろう。それらに対していかに対応するかが今後の課題だ」と述べている。1年後には、6カ月の実証実験の結果をフィードバックしたPaPeRoが、子供のパートナーや子守り役として商品化されているかもしれない。
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