[Analysis]

中小規模ERP市場は宝島?

2005/05/10

erp02.gif

 企業向けのパッケージソフト市場は2010年度まで年率5〜10%の成長率を維持し続けると富士キメラ総研が発表した。この市場予測は2005年1月から3月にパッケージソフトの開発企業を対象に行ったもの。

 日本には各都道府県ごとに独自の販売網を持つ“地場ディーラー”と呼ばれるシステムインテグレータが存在する。その出自はさまざまで、地銀の計算センターが独立したケースや地酒の卸売業者が地場に密着した販売網を生かしてパソコンを販売し始めたケース、薬品の卸売業者が地元企業の情報システム開発を請け負うようになったケースなどがある。彼らの多くは、システム開発のノウハウをパッケージソフトという形で提供していた。パッケージビジネスは、クライアント/サーバの時代に花開いた。

 ERP世界大手のSAPといえば、大規模企業の業務フロー改革を推進するベンダとみられていたが、ここにきて、中小規模企業をターゲットとした小規模パッケージを販売し始めた。パッケージとはいわば、さまざまな企業のニーズの最大公約数的な機能を集約したものである。SAPジャパンのバイスプレジデント ソリューション統括本部長の玉木一郎氏によれば、パッケージが威力を発揮するのは中小規模企業群であり、大規模企業ほど独自の細かい要求を作りこんでいかなければいけない、という。

 日本のパッケージソフト市場には、日本各地に散在する“地場ディーラー”のパッケージと外資系ERPベンダの中小規模企業向けパッケージがあるが、加えて、OBCや応研、ピーシーエー、弥生といった日本独自のERPパッケージベンダが存在する。この三つ巴の状況が日本の中小規模企業向けパッケージソフト市場の現状であるといえる。

 ERPパッケージ市場の攻略において、機能面での優位性が問われるのはいうまでもないが、同程度に重要なのが地域独自のニーズの取り込みや販売網の構築といった地域に密着した要素である。往々にして外資系ベンダはこの要素を軽視して首都圏以外の地域でのビジネスに失敗する。東京を地盤とする日本の大手ベンダでも地方で成功できるかどうかは、その地域独自の販売網の構造を理解できるかどうかにかかっているといってもいい。

 中期経営計画に取り組むNTTデータが展開する事業戦略の1つに、M&A型ITパートナービジネスがある。地場の有力システムインテグレータに資本参加することで、その企業が有する得意業種のノウハウを吸収するとともに、顧客基盤の拡大を図ろうというものだ。NECや富士通、日立製作所といった国内のITベンダがこれまで行ってきた戦略の踏襲(とうしゅう)ともいえるが、短期的かつ効率的に市場を拡大し、足腰を強めるためには効果的な戦略といえる。実際同社は着々と成果を上げつつある。

 大規模企業における基幹業務のIT化需要が一巡し、ERPベンダ各社は中小規模企業にターゲットを据え始めた。全国各地の地場企業がターゲットとなる場合、首都圏と同様のビジネス戦略はなかなか通用しないが、各ERPベンダはアイデアを凝らして同市場の攻略に力を入れ始めている状況といえる。

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)