[Analysis]

勉強するだけではITアーキテクトになれない

2005/06/07

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 2005年5月25日に日本ITアーキテクト・アソシエーション(ITAA)がキックオフイベントを開催した。設立趣旨は「曖昧(あいまい)なままのITアーキテクトの役割とスキルを定義」することなど。最近、ITアーキテクトという言葉を聞く機会が増えた。

 ITアーキテクトの育成はソフトウェア開発業界の1つのトレンドだといっていい。ITAAの設立もこの時流を形作る1つの要素として機能するはずだ。未来のITアーキテクトを目指す現場の若手エンジニアがITAAの講演を熱心に聞いていたが、彼らは近い将来、ITアーキテクトとして開発プロジェクトを技術面からリードできる存在となれるのだろうか。

 ITアーキテクトを巡る問題には非常に解決が困難なものがある。“ITアーキテクトが活躍できる場を作る”ということだ。ITアーキテクトを構成する要件には、「オブジェクト指向」や「UML」といった最新技術が含まれるとするのが一般的である。仮に、あるエンジニアが一生懸命勉強し、ITアーキテクトとしての必要な要件を満たしたとしても、組織全体が従来のメインフレーム開発で培った資産(開発プロセスなどを含む)を手放さなかった場合、彼の努力は無となるだろう。

 開発現場が必死にITアーキテクトの必要性を説いても、“上”が(ITアーキテクトの必要性を)認めない限り、彼に活躍の場所はない。これは主に開発側の問題だが、システム開発を依頼する側でも、開発側と互角に交渉できるITアーキテクトの存在が求められている。だが、求められているのは理想論の世界の話であって、現実はそこまで追いついていない。

 ITアーキテクトを開発現場に根付かせるためには、組織のトップが号令を出すベクトルと現場からその必要性を根気よく訴え続けるベクトルの2つの力の方向性が必要となる。漫然と勉強していてもITアーキテクトになれるわけではない。

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